やりがい搾取?“ブラック霞ヶ関”なぜ若手の離職を止められないのか 元官僚芸人「大組織の“歯車”ではなく、“スペアのネジ”くらいの存在だった」
■やりがい搾取?「ブラック霞ヶ関」の実態
政治主導が強まることの弊害は何か。宇佐美氏は「政治主導が固まったのは安倍政権で、もともと官僚側にいた、組織を知り尽くした人が仕組みを作るので実効的だった。逆にいうと、逆うことができない。厚労省のデータ改ざんが典型的だが、それまではデータを取って政策を作ってきたが、官邸のしたいことに合わせてデータを作る圧力が強まった」とした。環境の変化によって「“これは俺たちの仕事か”と現場の反発は大きかったが、戦った人は飛ばされる。有名な厚労省のエースは、主張としては勝ったが、翌年にアゼルバイジャンに飛ばされた」と続けた。 まつもと氏も「直属の上司だった課長も、大臣ともめて更迭された。人生の主導権を自分で握れないのが、辞める根本的な原因なのでは」と指摘する。さらに「ベースとして“ブラックだよね”と。毎日の残業がだんだん耐えられなくなり、“こんなはずじゃなかった”というのは結構聞く」という。 一方で「霞ヶ関も悪い。忙しいと言っているが、暇な部署・時期もある。一応忙しいところに人を回してはいるが、民間と比べると圧倒的にやりこみが足りない。もっとやれよと思う」と意見した。
■「書いた法律が六法全書に載った時は変えがたい快感」
ブラックと言われてもなお、官僚になるメリットはあるのか。宇佐美氏は「退職しても12年間生き延びて、当時より稼げている。基礎能力を作るにはいい職場。本当に若手が不満を抱いているかというと、そうとも限らない。自分の書いた法律が、初めて六法に載ったとき、仕事を残したと、代えがたい快感があった」と振り返った。 それでも若手官僚の退職が続く理由は、「政治主導なのに“政治家についていきたい”と思わせられなくなっている」と考察する。「政治家の意見に乗る人はやりがいが増えるが、逆に納得いかないと、“なぜ言うこと聞かないといけないの“となる。むしろ政治家の問題で、国会議員の権力が増えても、それに見合った質の向上があるかは疑問だ」とした。 まつもと氏は官僚になった利点を「国家の動きがわかった。あとは、芸人になっても“官僚でした”と自己紹介に活用していること」と語る。また、官僚から芸人への“異例の転身”で気づくこともあるという。「“何歳になったら”とレールが見えるのが嫌だったが、今は3年後の自分もわからない。レールがちゃんと敷かれている重みを感じた」と語った。 (『ABEMA Prime』より)