今度は亜細亜大の中国人教授が中国で“失踪”、中国共産党の権力抗争に巻き込まれた可能性も
(ジャーナリスト・吉村剛史) ■ またも中国人教授が中国で行方不明に 今度は亜細亜大学の中国人教授が、中国に一時帰国したまま所在不明となっていることが4月22日までに関係者らの証言で明らかになった。 【写真】昨年2月に一時帰国して以来、消息不明となっている范雲濤・亜細亜大教授 消息不明となっているのは、亜細亜大学都市創造学部都市創造学科で国際法や政治学などを受け持っている范雲濤教授(61)である。 取材を進めると、同教授は中国の国政助言機関、人民政治協商会議(政協)の王滬寧主席とパイプがあることや、日本の学生を対象にした中国の“プロパガンダ事業”活動歴、また家族が警察とトラブルになった問題などが関係者らの証言で新たに浮上した。それらの行動のいずれかが中国当局から問題視された可能性も指摘されている。 日本在住の中国人研究者としては、今年3月に神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部グローバル・コミュニケーション学科の中国人教授、胡士雲氏(63)が、范氏と同様、昨年夏に一時帰国して以降所在不明となっていることが本誌報道で表面化したばかり。いずれもスパイ関連を取り締まる国家安全部(省)などの中国当局に拘束された可能性が指摘されており、関係各方面が注目している。 (参考)中国当局が拘束か、神戸学院大の超大物教授が昨夏に一時帰国して以来「半年以上行方不明」状態(JBpress:2024年3月16日)
■ 王滬寧氏とパイプ 今回新たに“失踪”状態にあることが判明した范氏は、亜細亜大の広報担当者らによると、上海復旦大から日本の京都大学大学院に留学し、法学博士を取得。大阪国際大、龍谷大で非常勤講師を務めた後、中国弁護士として東京の法律事務所にも所属したことも。上海交通大助教授、上海市外国貿易大客員教授などを経て2006年4月より亜大で現職。 亜細亜大によれば、昨年2月に一時帰国した本人と連絡がとれなくなり、日本在住の家族とのやりとりを通じて昨春以降は病気休職扱いとし、担当講義やゼミなどは他の教員による代講に切り替えたという。 范氏と交流があった日本人研究者らによると、「上海復旦大学で学んだことのある研究者」という共通点から、范氏は中国共産党序列4位で中国人民政治協商会議主席の王滬寧氏ともパイプが太かったとされ、コロナ禍前には、日本の学生を中国に招待する一種のプロパガンダ企画を展開していたこともあるという。 この時、范氏から複数の日本人研究者に対して、「教えている学生らに参加をうながしてほしい」との依頼がなされていたというが、「政治色が強すぎる」として断られる場面もあったという。