旧ソ連の核戦争用指揮車、ウクライナの前線に現る 生産数わずか数両
設計者たちが想定していなかったような戦闘に投入された
装甲も備えず、前方や横が開放されているゴルフカートめいた車両に比べれば、ラドガは機械化戦にはるかに適している。ラドガはT-80戦車の装甲付きの車体を用いており、1250馬力のガスタービンエンジンを搭載する。そのうえ、4人前後が座ることのできる乗員スペースは広々とし、パッド入りの肘掛け椅子まで据え付けられている。 ラドガは無線装置一式のほか、車体上部のマスト(支柱)にテレビカメラも搭載する。これらの装備によって、「終末の日」に指揮車両の役割を果たせるようになっていた。北大西洋条約機構(NATO)の核兵器が次々に降ってくるなか、ソ連の指導者たちがラドガの車内で腰を掛け、自国の核戦力部隊を指揮しながら、安全な場所に避難する様子を想像してみてもいい。 あるいは現在のロシア軍の大佐が、クレミンナ周辺のウクライナ軍部隊への攻撃中、ラドガの居心地のいい車内から自身の大隊を指揮している様子も。 ラドガの小部隊はチョルノービリ原発周辺で出番があったが、核の黙示録への対応という主な役割は果たさずに済んだ。キーロフスキー工場の設計者たちも、まさかラドガが2024年になって通常戦で前線に投入されることになるとは、夢にも思っていなかっただろう。 彼らはまた、ロシアがよりにもよって、独立してNATOの支援を受けるウクライナと戦争をやり、わずか2年で装甲車両を1万5000両も失うなどという事態も、とても想像できなかったに違いない。
David Axe