<春再び―市和歌山の挑戦>/中 修正点、お互いに助言 リベンジ果たし秋の県予選連覇 /和歌山
こだわったのは「表現力」――。松村祥吾主将(2年)は、野球の練習では耳慣れない「力」を口にした。3位に終わった新人戦の後、チーム内では選手が互いに修正点を指摘し合う声が増え始めた。 半田真一監督(41)は「『自分がやるんだ』という責任感を持て」と発破をかけた。初めは消極的だった選手たちも、新人戦を経て、互いに自分の考えや思いを伝えるようになっていった。「全員で一人の選手を評価し、いけないところは修正方法まで含めて言う」と松村主将。個々に練習に励むのはもちろん、一人一人の力を伸ばすため、皆が我が事として的確な指摘や助言を考える。新チームは、徐々に形になってきた。 秋季県2次予選準決勝。勝てば近畿地区大会出場が決まる大事な一戦を迎えた。相手は新人戦準決勝で敗れた和歌山商。半田監督はこの巡り合わせをプラスに捉えていた。「『次は絶対に勝ちに行くぞ』というモチベーションになった」。選手たちも気持ちは同じだった。松村主将は「ウオーミングアップの時点からして、皆から『やり返してやろう』という気持ちがあふれていた」という。 先発は満を持してエース、米田天翼投手(2年)だった。「負けたら近畿大会出場はない。絶対に負けられないと力が入った」。序盤から安定した投球を披露した。連打に遭って1点を失った五回には、なおも続いた1死三塁のピンチに、相手が試みたスクイズを落ち着いて処理し、流れを渡さなかった。九回123球、2失点。一度もマウンドを譲ることなく完投した。 「投手任せになっていた」という打線は、16安打12得点。最終回には、新人戦で打撃不振に苦しんだ森大輔選手(2年)が2点本塁打を放ち「練習の成果が出た」と喜んだ。毎朝6時からバットを振り続けていたという。「同じ相手に2度負けられない」と、投打でリベンジを果たした。 決勝の和歌山東戦は、ミスや相手の足攻に翻弄(ほんろう)され、序盤に失点して追う展開に。四回に米田投手の右前適時打で1点返し、六回は寺田椋太郎選手(2年)の一発で同点に。寺田選手も新人戦で無安打と苦しんだ一人だ。「俺らのせいで負けた」。始発でグラウンドに向かい、森選手と一緒にスイングやティーバッティングに取り組んだ。成果は決勝で現れた。 そして、七回2死二、三塁の好機。「あの場面でよく打ってくれた」と半田監督が評価した堀畑樹選手(2年)の打球は風にも乗り、中堅手の頭を越える勝ち越しの2点適時打となった。「好機はここしかないと、思い切りいった」。試合を決定づける一打となった。 秋の県予選、2年連続の優勝を果たし、先輩たちに並んだ。「弱なった」とは決して言わせない、堂々たる結果を残した。【橋本陵汰】