女子体操パワハラ問題で出された塚原夫妻の反論、弁解声明文の矛盾点
女子体操のリオ五輪代表、宮川紗江選手(18)からパワハラを告発されていた日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長(71)と、その夫である塚原光男副会長(70)が8月31日、連名の書面で一部謝罪を含めた弁解、反論をプレスリリースした。文書は、5枚にわたる長文で、謝罪から始まり、「1.塚原千恵子の言動について」「2、塚原光男の言動について」「3.今回の件及び今後について」という3つの項目にまとめられていた。 冒頭では、報道による関係者への迷惑や強化合宿中の選手へ与えた精神的動揺などを謝罪。 「まだ18歳という宮川紗江選手にこのような会見をさせてしまったことにつきましても、私たちにも責任があることは確かであり、宮川紗江選手に対して、心からお詫びを申し上げます。私たちの言動で宮川紗江選手の心を深く傷つけてしまったことを本当に申し訳なく思っております」と宮川選手への謝罪の言葉を綴った。 だが、ここから先は、その言葉とは、裏腹に「決して宮川選手を脅すための発言はしていません」という自分たちの正当性を訴える弁解、反論、否定だった。宮川選手の主張を認めた部分がある一方で、その弁解、反論、否定のほとんどが説得力に欠ける矛盾したものだった。
塚原夫妻が“説明文”で認めている点と弁解、反論、否定している点を整理してみる。宮川選手の主張を認めたのは以下の5箇所だ。すべて塚原女子強化本部長の発言に関しての部分である。 (1) 宮川選手の専属である速見コーチに対する「あのコーチはダメ」発言。 7月15日の合宿中に宮川選手は塚原夫妻に個室に呼び出され、速見佑斗コーチの暴力行為について「あのコーチはダメ、だから伸びないの。私は速見より100倍よく教えられる」と発言したと暴露された事実に対して「確かに宮川選手も認めているとおり速見コーチに暴力行為があったため『あのコーチがダメ』とは言いましたが、私が『100倍よく教えられる』とは言っておらず、このような発言をした事実はありません」と説明。「あのコーチがダメ」との発言についてだけは認めた。速見コーチの暴力行為は肯定されるものではないが、宮川選手に「私と速見コーチを引き離そうしている」と感じさせるに十分な発言だ。 (2)「家族でどうかしている。宗教みたい」発言。 同じく7月15日の2対1の聴取で「家族でどうかしてる。宗教みたい。」と発言した点について、「私は暴力について、宮川選手に対して『家族も暴力を認めているの?』と確認したところ『家族もコーチの暴力を認めている』と言っていたため、思わず、たとえとして『宗教みたい』とは言ってしまいました。この言葉については不適切だと大変反省しております」と、反省を込めて認めた。だが、これは宮川選手の家族の人権や名誉を侵害する問題発言である。 (3)「五輪に出られなくなるわよ」発言。 この強烈なパワハラ発言については、「確かに宮川選手にそのようにお伝えしたのは事実です」と認めた。ただ、この発言についても「脅していない」との弁解が付け加えられた。 (4)「2020に申込みをしないと今後協会としてあなたには協力できなくなるわよ」発言。 2016年12月19日に塚原女子強化本部長は宮川選手に電話をかけ「2020東京五輪強化選手」に参加していないことに対して、こう発言したことは認めたが、その理由についての弁解があった。 (5) 速見コーチの暴力行為を認めさせるための誘導質問の存在。 「暴力はあったんだよね、あったんだよね。」と繰り返し誘導尋問のような発言をした行為については「正確にこの時のことをお伝えいたします」と記述。「私は宮川選手に対して、まず、『速見コーチによる暴力はあったの?』という質問をしたところ、宮川選手は無言だったため、私が再度『速見コーチがあなたに暴力をふるっているところを見た人がいるんだけど、暴力はあったんだよね?』と質問したところ、宮川選手が速見コーチの暴力を認めました。ただ、この点について誘導と言われてしまうのであれば、私の確認の仕方に落ち度があったと思っております」と、この発言や、その問答に問題があったことを認めた。 以上の5箇所を認めただけで十分にパワハラ認定されるべきだろう。