『家政夫のミタゾノ』の持ち味“真剣なバカバカしさ”が炸裂! 前作から山本舞香が再登場
かわいらしいお団子ヘア、赤を基調とした派手めな服の後ろ姿。「もしかして……?」と思っていると、画面にこれでもかと映し出される意志の強そうなくっきりとした顔。『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)第5話に山本舞香が演じる“もとやん”こと本仮屋素子が登場した。 【写真】『家政夫のミタゾノ』山本舞香インタビュー撮り下ろしカット 素子は2022年に放送された本作のシーズン5で家政夫のミタゾノさん(松岡昌宏)のパートナーだった人物。“もとやん”と名付けたのは光(伊野尾慧)で、素子はその名の通り“元ヤン”であり、私服はほぼジャージ。ミタゾノさんに憧れ「姐さん」と呼び慕っていた。シーズン5最終回以来、登場していなかったが、実は「むすび家政婦紹介所」の“姉妹店”に異動していたことが判明。依頼人からある依頼を受け、とあるビルに侵入したところでミタゾノさん、光、そして新人家政婦の実優(桜田ひより)と再会したのである。 山本は現在放送中の金曜ナイトドラマ『今日からヒットマン』(テレビ朝日系)に出演中。犯罪組織「コンビニ」に所属し、ヒットマンにさせられた十吉(相葉雅紀)の相棒となったちなつを演じている。今回はその“番宣出演”で、素子は自分の仕事は、「金曜日はいつも“夜の11時15分”から始まる」と言っていて笑ってしまった。ミタゾノさんは「十吉によろしく」と声をかけ、『今日からヒットマン』とのコラボが実現。本作のファンにも、それぞれの俳優のファンにも嬉しい一幕となった。素子の登場は冒頭の数分。このために、本編とは直接関係のない場面を設けたことにスタッフの『家政夫のミタゾノ』愛を感じてしまった。 さて、今回は「お隣さん」がテーマ。高校生の有坂凛(中島もも)は隣人の高森修作(中村梅雀)の家に忍び込み、金目のものを探して書斎で金庫のロックを開けようとしているところを本人に見つかってしまう。とっさに言い訳をした凛だったが、偶然高森家に派遣されていたミタゾノさんは、凛が本当は猫など飼っていないことを察知。気まずさを感じた凛は、そそくさと退散しようとするが、なぜか修作は凛を夕食に誘う。実は修作は、世界中の美食家たちを唸らせてきた伝説のシェフ・ムッシュー美月こと、美月洋三だというのだ。 1年前に唐突に引退を発表し、今では不定期に自宅で晩餐会を開いているムッシュー美月。今夜はその晩餐会で、ITの革命児・井原翔真(佐藤祐基)や音楽プロデューサーの宇崎貴利(池田鉄洋)、グルメライターの遠藤知佳(川久保晴)が招待されていた。凛は修作の正体に興味を示そうとせず、最初のスープに口をつけただけで席を立ってしまう。そして修作との会話の中から金庫の解錠番号が分かった凛は金庫の中から、レストランのようなところで開店祝いをする夫婦が写し出された古い写真数枚を見つけ出した。目当てのものがなく、凛は家を出ていこうとするがなぜか家は玄関も窓も漆喰で閉ざされ、外に出られないように細工されていた。しかも修作はミタゾノさん以外が飲んだスープには「1時間後には死ぬという毒が入っている」と言い出し……? 修作が言うには、一見、関係のなさそうな3人は“許されない罪”を犯したのだという。キーアイテムのように出てくる写真に「修作の奥さんはこの3人のせいで死んでしまったのでは?」と予想してしまうのは、よくあることだろう。だが修作は「妻は大往生だった」と言ってあっさりそのルートを消し去っていった。わざと奥さん側に意味があるような演出になっていたのは、おそらく光がいつものふにゃふにゃ声とは違う、あたかもいつも頭脳明晰であるかのような雰囲気で「謎はすべて解けた」と言うためであった。 これは、光を演じている伊野尾が所属するアイドルグループ・Hey! Say! JUMPのメンバー、山田涼介が主演を務めた『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)のパロディである。このひと笑いのためにかなり手が込んでいることに気がつくと、あまりの滑稽さに後になってさらに笑えてくる。しかし、その「バカバカしさに真剣」なところが本作の何よりの良さである。 実は、凛は家庭環境が不遇で将来の夢もなければ、未来に希望も持てていなかった。修作の家に侵入したのは、生きていくためのお金を盗むためだった。でも「1時間後に死ぬ」と言われれば怖い。ところどころおふざけがあっても、本作がいつもドラマを通して伝えたいことはしっかりしている。今回は、金言としてはっきりと残しておきたい。生きていることに意味が見いだせなくても、先に明るい光が見えなくても人は「死ぬのが怖い」だけで生きてていいのである。
久保田ひかる