中高年男性から注目度急上昇!「男性バレエ」沼の魅力とは? 50代おじさん記者が体験してみた
50代の男性の友人複数人から「バレエを習っている」という言葉を耳にした。最近は中年男性にバレエが人気なのか。インターネットで検索すると「男性が未経験からでも通える」という、バレエ教室が見つかった。男性受講生は、どんな理由でバレエ教室に通っているのか。 桂文枝「絶句」 ”20年愛人!が41歳で孤独死していた これまで踊りとは無縁だった50代ライター記者が、東京・高輪にある「バレゾナンス東京バレエスタジオ品川高輪教室」というバレエスタジオに取材をした。 ◆最も多い理由は「姿勢を良くするため」 品川のバレエスタジオは、地下鉄浅草線の高輪台駅から徒歩1分ほど、JR品川駅からは徒歩10分程度の場所にある。月曜の午前11時から、日曜夜の8時台まで技術レベルに合わせたレッスンが開講されている。ドアを開けると、取材に応じてくれる女性の先生が出迎えてくれた。 「ネットで調べてみると”男性歓迎″のバレエスタジオって結構あるんですね」と、素朴な疑問をぶつけてみると、先生からは意外な言葉が返ってきた。 「多分ほとんどのレッスンスタジオは、男性も参加できるはずですよ。ただ、それを発信していないだけだと思います」(バレエスタジオ講師) そうだったのか。そうなると、宣伝していないバレエ教室も含めて、男性が受講している可能性は思いのほか高いのかもしれない。実際、このスタジオにおいても男性の受講生が「1割を超えるぐらい」在籍している。これが多いのか少ないのかは分からないが、1クラスあたり5~10名の受講生の内、男性受講生が必ず1名以上参加しているという。 さらに年齢層を聞くと、40~50代がいちばん多く、中には20代の男性も。気になるのは、どんな理由でバレエを始めようとしたのかだ。 改めて先生に尋ねると、 「バレエが好きで始めたという方もいますが、それよりも姿勢をよくしたい方が圧倒的に多いです。中には、娘さんが習っていてそれを見てやってみたくなったという方もいます」(同前) という回答が返ってきた。 確かに、姿勢については自分も心当たりがある。仕事中など、すぐそばにあるガラスや鏡に映る自分の猫背な姿がイケていないこと。おじさんを通り越しておじいちゃんになっている。 実際に、男性受講生で姿勢が改善された人はいるのだろうか。 「バレエを続けている人の中には、明らかな効果が表れる方も多いです。入会当時は、左右の肩が内側に入り込む巻き肩になっていた方も、数カ月たつと見違えるような美しい姿勢になっていました。また音楽に乗ってジャンプしたり回転したりと全身運動をすることによって、程よく疲れて、よい睡眠効果が得られると思います」(同前) 40~50代になると「不眠」や「肩や腰の痛み」などの更年期障害に悩まされることもあるが、それらも解消できそうだ。ちなみに20代の若い男性受講生の中には、コンテンポラリーダンスや新体操、キックボクシングなど、他の趣味や運動に生かすため習いに来ている人もいるそうだ。 「特に初心者クラスは、ケガの防止などのためにストレッチを念入りに行っています。そうすることで体が柔らかくなってきてレッスンにも集中できるので、日ごろのストレス発散や、オンオフの切り替えもしやすくなります」と、姿勢以外の効果も教えてもらった。 ◆体験レッスン開始! まずは入念なストレッチから 続いて、楽しみにしていた「体験レッスン」がスタート。今回のレッスンは未経験者が体験しやすい「プレ・コンフォタブルバレエ」クラスのショートバージョン。スタジオのホームページから2200円で体験申し込みができる。 ウエア(レンタル料300円)やバレエシューズ(同100円)は当日レンタルが可能。入会する場合は入会金3000円とレッスン料が1回ごとに2800円必要になる。回数チケットを購入すれば、1回ごとに購入するよりも割安になり、他に月謝制でも受講することができる。また自身のバレエシューズが欲しいという人には、スタジオなら1000円という非常に安価で購入できる。 動きやすい服装であれば特に指定はないが、足元がよく見えるように、脚にフィットしたウエアがおすすめだそうだ。 最初はストレッチ。レッスンでも30分かけてじっくり行う。軽く屈伸をしてから、太もも、ふくらはぎ、足の甲の筋肉、足裏の順にもんだりたたいたりしながら、筋肉や体をほぐしていく。 「次は体を前に倒していきます。細くながーく、口からすーっと息を吐きながら、体はリラックスした状態で、手は力を抜き、床に垂らして脱力した状態でー。体を戻すときには、鼻から息を吸うことを意識しましょう」(同前) 体を動かすと同時に、呼吸を意識することが大事だという。なるほど、息を吐きながらストレッチを行うと、体が柔らかくなってくる実感がある。 続いて、片足を曲げての前屈、側屈、そして体が硬い人にはいちばんつらいと言われる開脚前屈に挑戦。 「できる範囲でいいので、なるべくいちばん遠い所に手を伸ばして。体が床の方へ溶けていく感じです──」(同前) 先生が放つ言葉が心地よい。その言葉に促されるように、自然と体が動いていくようだ。でも、たった15分ほどだがすでに疲れてきた。 「このストレッチを初めて行うと、それだけで疲れてしまいます。でも、普段は伸ばさない筋肉を伸ばすので、筋肉がほぐれて体がぽかぽかしてきます」(同前) 半袖で最初は肌寒かったが、次第にそれも気にならなくなってきた。 ◆基礎レッスン「足の基本動作」へ 次に、いよいよバレエの基礎レッスン。まず、基本となる足の動作「1番」「2番」「4番」「5番」のポジションを教わる。この4つのポジションを使って、音楽に合わせて踊る。 小さく膝を曲げる「ドゥミ・プリエ」から、下まで深く膝を曲げる「グラン・プリエ」の動作を繰り返し行っていく。 やってみると、これがまたつらい。スクワットに近い状態なので、膝に効いてくる。そして「ルルベ・アップ」で、つま先立ち状態のままバランスを取り「シャッセ」といわれる、すり足で足をそろえる動作が入る。これは、ふくらはぎがつらくなる。 一連の動作についていくのが大変だが、先生の動きを見ながらだとついていける。手本とする先生の姿勢が美しいので、自分もそれを意識するようになってくるのだ。これが大切なのかもしれない。途中、先生に褒められ、初めてなのに自分ができている気分になってくる。 「実際のレッスンでは、バーのレッスンをあと4種類行います。その後、バーをなくして踊ります。手や腕も使うので、上半身をうまく活用できるようになると、足の負担も少なくなります。まさに、全身運動ができるダンスだと思います」(同前) 今回は通常のレッスンの短縮版だが、一つひとつの動作を意識して行えるように先生が声をかけてくれるので、集中してバレエのレッスンを体感することができた。 実際のレッスンでは、男性に比べると女性の受講生が多いようだが、これなら周りを気にせず集中して取り組め、普段の仕事でのストレスも発散できそうだ。仕事の合間にレッスンを受けにやって来て、リフレッシュした後仕事に戻るというサラリーマンもいるそうだ。 大きなホールでの発表の場を設けているので、それを楽しみに、取り組んでいる男性受講生も多いという。 姿勢がよくなるだけでなく、バランスを取りながら片足を上げ、ターンで高く跳べるようになれば、どんどんバレエが面白くなっていくだろう。やってみて、私もバレエに一歩足を踏み出したい気持ちになってきた。 取材・文:西谷忠和
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