第93回選抜高校野球 「食」支える最強応援団 寮食堂、母親目線で /京都
<センバツ2021> 19日開幕の第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)に出場する京都国際は、京都市東山区の学校敷地内にナインが住む寮がある。選手たちやコーチ陣の「食」を支える食堂では、職員やパートなどスタッフ9人が日々の料理に腕を振るう。槙尾小夜子さん(74)も、その一人だ。【中島怜子】 「お帰り」「行ってらっしゃい」。選手たちが食堂を訪れた時、空になった皿を片付けてグラウンドに戻る時、槙尾さんらが声を掛ける。椅子を机の下に片付けないと「ちゃんとしまっていきなさいよー!」としかることも。「自分の子育てを終えた今、あの子たちは息子のよう」。槙尾さんがほほえむ。 槙尾さんはかつて、陸上競技の実業団チームの食堂に勤めていた。2001年に学校の寮が建てられた当初、保護者らが交代で食事を作っていたが、「負担が大きい」とスタッフが雇われるようになった。槙尾さんも経験を生かし、定年退職後もパートとして食事を作り続けている。 体を大きくするため、大盛りのご飯を食べる選手らが少しでも食が進むようにと、味付けは少し濃いめ。これまで作り上げたレシピの数々はノートに記録し、段ボールに入れて食堂の片隅に置いてある。「ほとんど見返すことはないが、過去のレシピをアレンジすることもあるので」 厳しい練習を日々こなし、育ち盛りの選手らにとって、食事は重要だ。「体を大きくするため、麺類とご飯物を一緒に出してほしい」「プロテインとセットで飲む牛乳が、苦手な子もいる。別の飲み物も置くようにしてくれないか」と、指導者らから頼まれることもしばしばだ。「食事を渡すと『これ苦手やから量、減らしてくれ』と、選手から頼まれることもあるけど」。槙尾さんが笑う。 同僚の王和美さん(62)は「名前と顔を覚え、何か気になれば声を掛ける。『ねえ、君』と言われるより、うれしいだろうから」。豊田なお美さん(52)も「卒業生も来てくれるので毎年、誰だったか思い出すのは大変」と笑顔を見せる。「食堂の仲間全員が、あの子たちを応援している」と槙尾さん。夢舞台に挑むナインには、何より力強い応援団だ。 〔京都版〕