田中希実が1500mで標準記録突破V、パリ五輪代表に内定 東京五輪以外の自己最高の意味とは?【日本選手権2日目】
田中自身は東京五輪の記録を更新できないことを、どう考えていたのか。 「高校生の頃は4分20秒がなかなか切れなかったところから、一気に4分15秒まで行ったことがありましたが、“もう高校生じゃないんだから”と自分で蓋をしてしまっていたところがありました。一度4分を切ったのだから日常的に切ると設定すればいいのに、そこは最大限に調子が整う(五輪&世界陸上など)本番の目標であって、それ以外のレースはそこに向かうための目標という感じで分けてしまっていました」 トレーニングや体調面の理由もあったと思われるが、田中はメンタル面の理由が一番大きかったと考えている。 ■気持ちのコントロールに成功した日本選手権の1500m 田中はレースに多く出場する選手。以前の日本人なら好記録だった4分10秒以内は数限りなく出している。だが4分6秒未満となると簡単には出すことができない。21年以降は集中力が高まる五輪か、世界陸上でしか出すことができなかった。 それを今年は五輪前に2レースで出している。データだけを見ればパリ五輪で大きく記録を更新できる予兆と言っていい。さらにレースの連戦パターンだけでなく、気持ちをコントロールする部分でも今回は収穫が大きかった。 田中は直前の気持ちの持ち方で、走りが変わる選手と自他ともに認めている。日本選手権の予選は「(今日失敗したら)明日がない」くらいの気持ちで臨んだ。4分08秒16と、4~5月には1本の試合で全力でしか出せなかったタイムで走った。日本選手権予選の最高記録でもあった。そのときの気持ちの持って行き方がよかった。決勝も「昨日をなぞるだけでよかったので、気持ちの部分で迷うことがありませんでした。目の前のことに集中できた1日だった」という。それをパリ五輪に応用できれば、地元五輪で気持ちを高められた部分を、今度は意図的に作ることができる。 「いつもほどフラストレーションはたまりませんでしたが、まだ自分の中で会心の走りではなかった。ただ最低限今やるべきことや、1歩を踏み出すための地固めができたかな、という思いはあります」
慎重に言葉を選ぶ田中がここまでコメントした。そのくらい、手応え十分の記録だった。 (TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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