福島県相馬市松川浦産アオサ欧州輸出拡大へ オランダ事業者 香り高さ評価 産地再興の弾みに
【オランダ・エイマイデンで本社報道部・丹治隆】オランダで日本産水産物を扱う北海水産は、欧州全域15カ国に広がる販路を生かし福島県相馬市松川浦産アオサ(ヒトエグサ)の流通を拡大する。松川浦産は香りが高く欧州の料理にも合うため需要が見込めると判断した。県漁連はアオサの生産体制整備に着手し、福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)は生産性向上の研究を今年度、始めたばかり。欧州への輸出が拡大すれば東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの産地再興に弾みがつく。 11日午後(日本時間11日夜)、オランダ・エイマイデンにある北海水産で内堀雅雄知事と面会したマリナス・ノーデンボスCEOが流通拡大方針を明らかにした。アオサに加え県産日本酒の販売も本格化させる。 同社は原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を欧州連合(EU)が撤廃したのを受け、昨年10月にEU加盟国として初めて松川浦産アオサの輸入を開始した。内堀知事はノーデンボスCEOに輸入へのお礼を述べた上で今後のさらなる協力を要請した。ノーデンボスCEOは、松川浦産アオサの品質の高さや豊かな味わいを評価。欧州に住む日本人だけでなく、欧州各国の家庭料理にも浸透させたい考えを示し、「取引量を増やしていきたい」と語った。
同社は輸入拡大の規模を明らかにしなかったが、欧州15カ国の1万世帯に冷凍魚介や水産加工品を配送する事業を展開している。日本料理のレストラン「北海キッチン」もオランダ国内で経営している。今後は松川浦産のアオサと県産日本酒を使ったメニューをより多く提供する計画という。昨年度のアオサの輸入実績は10月からの半年間で100グラム入り約1500パックだった。今年度以降、増えるのは確実だ。 県産日本酒の輸入増の第1弾としては、曙酒造(会津坂下町)と辰泉酒造(会津若松市)を取り扱う。 ■生産体制を整備 県漁連 エフレイ 松川浦のアオサは相馬双葉漁協の組合員が養殖している。県漁連は生産体制の整備に向け、今年度から国の「がんばる養殖復興支援事業」を活用して養殖道具の更新などを進めている。エフレイは理研食品や理化学研究所などへの委託事業としてアオサを含む海藻類の大量養殖技術を確立するための研究に着手した。
震災の津波でノリ棚が損壊し、原発事故の発生で一時、出荷の自粛を強いられた。2018(平成30)年度に出荷を再開したものの2023(令和5)年度の生産量は震災前の25%ほどだ。県漁連や県などは北海水産での取り扱い増を契機に、生産量の回復を加速させたい考え。 県産品振興戦略課は「北海水産の欧州でのネットワークと情報発信力で福島の食の魅力が浸透し、欧州全体への県産品の輸出量増加につながってほしい」と期待している。