大阪から大分へ 一から観光まちづくりに携わる男の生き方
若い時に旅した大分が原点 そして再びその地へ
なぜ、豊後大野なのか。それは李さんが17歳の時に初めての一人旅をした場所が九州だった。中でも「大分」は、その旅の最終地点。そこでは最も多くの出会いがあり、現在でも土地の人たちと連絡をとっていた縁があったという。 李さんにとって、こうした出会いの数々が自らのペンション経営の道につながった。「僕が旅をしたのは1979年で、その時は『旅に出る』ということは、その地域で生活をしている人との出会いがあったり、暮らしぶりと関係するというものが、ひとつのムーブメントでした」 だが、李さんは例えばではあるが、現在の旅は1泊2日の瞬間芸に思えるという。都会の価値観をそのまま地域に持ってくるのは地方創生ではないと考える。「そういう意味では、豊後大野って観光に毒されてなくて、おもしろい価値がいっぱい手付かずで残っているのが僕にとって魅力だった。それに『おんせん県』で売り出してる大分ですけど、ここに温泉はありませんしね。僕に言わせれば、ここは20年前の大阪ですわ」
8月に「ウェルカム神楽」公演 復興の願い込め若者が舞う
そんな李さんが現在、豊後大野で力を入れて周知する観光の目玉のひとつが「ウェルカム神楽」だ。李さんによると、豊後大野市内にも神楽座があり、主に各神社の境内でやるコミュニティの部分があるが、この神楽は地元高校の「神楽部」に所属する若者が、神楽が好きだからこそやっているものだという。 「神社以外のコミュニティでやるのは、とても大変なんですが、彼らはほんまに、交通費しか出ない中で一生懸命やってるんです」。現に、先の大阪で行われた大分県人会での披露の際も、朝一番の電車に乗って交通費支給のみでやってきた。しかし、そんな疲れを一つもみせず、彼らは迫力の舞を見せ、その場にいた県人会の人たちに感動を与えていた。 「これだけの神楽をしてても、見てもらえるきっかけが全くないんです。だから、豊後大野へ観光できてもらって、彼らの神楽をみてほしいと、いま奔走してとこですわ」 これは、地震からの復旧・復興への願いを込め、若者が伝統的な神楽を見せる。そして、観光まちづくりを進める李さんにとっても、自然と力が入る。大阪で様々な観光の在り方を追求してきた男が、大分・豊後大野でどのような展開を繰り広げられるのか。関西から離れてはいるが、その様子は今後も注目されそうだ。 8月28日午後2時から、同市の神楽会館での公演も決定。体験チケット500円。問い合わせは一般社団法人 ぶんご大野里の旅公社(電・0974・35・3601)まで。