ムシでつなぐSDGsの輪 福島県田村市の常葉振興公社 使用済み菌床で飼育 エコ社会促進 大阪万博展示へ
福島県田村市常葉振興公社は、使い終わったキノコの菌床や耕作放棄地の竹を活用して育てたカブトムシを、エコ社会の促進に役立てる。国連の持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」にちなみ、“ムシディージーズ”と銘打ち発信。一回り大きく成長させることができ、大阪・関西万博に展示して環境に優しい飼育方法の成果をPRする。虫の力で自然環境を守る重要性を訴えていく。 昆虫を核とした地域づくりを進めている公社は、自然を守りながら、多くの人を喜ばせるカブトムシの飼育法を模索してきた。キノコの菌床が捨てられた畑などには、数多く産卵されることに着目。枯れ葉などの腐葉土に比べて栄養価が高いため、幼虫も成虫も大きく育つという。 昨年から本格的に取り組み始めた。県内のキノコ農家や企業から協力を得て、キノコ栽培後の菌床を購入。粉状にして敷地内に置き、定期的にかき混ぜて発酵させて飼育床とした。その中に野生の個体が産卵し、幼虫を取り出して観光施設「ムシムシランド」で温度管理しながら育てている。市と地域協働事業連携協定を締結した福島民報社が、協力企業とつなぐ役割を果たしている。
さらに竹を粉砕して粉状にした飼育床でも試した。市内の耕作放棄地などで伐採した竹をパウダー状にして発酵。二つの方法とも、数千匹の幼虫が産まれた。一般的な幼虫1匹の重さは20グラムほどだが、約30グラムある。大型の成虫になる期待があるという。今後も荒れた林などの竹を活用し、飼育床にする。 飼育床作りのために、昆虫ラボ(実験室)も整備している。建築士の資格を持つ職員が、馬小屋だった施設を改装しており、間もなく完成する。施設では国内在来種の他、世界最大種のヘラクレスオオカブト、ミヤマクワガタ、オオクワガタなどの幼虫も飼っている。 成虫は、大阪・関西万博でデビューする。経済産業省が設ける県内15市町村のスペースの一角にミニチュアのカブトムシドームを設け、約500匹のカブトムシを放つ。 将来的には、給食の調理の過程で出た食材の余りなどをカブトムシの餌に活用して食品ロスを減らす計画だ。カブトムシを育てた後の飼育床には、ふんが豊富に含まれており、花の栽培に生かすことも検討している。さらに成虫や飼育床の販売、ふるさと納税の返礼品にすることも視野に入れている。
ムシムシランド施設長の石井大樹さん(40)は「田村市の豊かな自然を活用し、知恵を絞りながら、環境に優しい社会に寄与したい」と意気込んでいる。