「不況と好況の循環」は、なぜネットの経済ニュースでは掴めないのか?
前回は経済ニュースを「読みこなす」ためには、少し遠回りに見えても、経済の「仕組み」や「流れ」をまとめて勉強しておく方がいい、言い換えれば「体系的な知識」を獲得するには、ポータルサイトより紙の新聞の方が適している、という話をしました。ポータルサイトが、様々な媒体から記事をつまみぐいしているのに対し、紙の新聞では複数の記事が補完しあって読者の理解が深まるように編集されています。そして、続報が次々に出てくるような大ニュースの場合、記事は連載小説のように、前の報道を受けて書かれているので、途中だけをポータルサイトで読んでも本質が理解できないケースがある、という話でした。 これは事件や政治などに関するニュースを読むときも同じです。しかし、とくに経済ニュースを読むうえでは、もう一つ重要な注意点があるのです。それは、経済特有の「サイクル」を意識する必要がある、ということです。
経済が動くメカニズムとは?
みなさんも、景気が好況と不況を繰り返しているということはご存知でしょう。同様に株価を見ても、だいたい波のように上昇と下降を繰り返しています。このように、経済の動きにはある種の周期が存在します。 さらに、経済が動くメカニズムに注目すると、ここにも循環があります。細かく理解するには経済学の本を読む必要がありますが、普通のビジネスパーソンであれば、下記のフローチャートだけ覚えておけば十分でしょう。
経済のサイクルを理解する上では、「需要」を出発点に考えると分かりやすいと思います。需要とは、企業や個人、外国などが必要としているモノやサービスのことです。基本的には「消費」「投資」「輸出入(の差)」の3要素を合わせたものと考えることができます。 需要が拡大するケースを考えてみましょう。例えば、米国の景気は日本の需要にも大きな影響を与えます。景気がよければ、アメリカ人が自動車や家電製品をたくさん買うので、日本からの輸出が増えるからです。あるいは、日本の景気の見通しが明るいときは、人々は財布の紐を緩め、国内で消費が増加します。この場合、モノがよく売れるので、企業が工場を建設するなどの投資も活発になるでしょう。 こうした要因で需要が拡大すると、それを満たすために企業は生産を増やします。その結果、企業には利益が生じます。そして、従業員に支払う賃金も、ボーナスや残業代の増加、賃上げといった形で増えるでしょう。 このとき、企業はさらなる利益の拡大を狙って工場を増設するなどの投資を行います。一方、個人は給料が増えたので消費を増やすでしょう。すると、こうした投資や消費が、さらに需要を増やすことにつながります。こうした循環が続いているのが「好況」と呼ばれる時期なのです。 もちろん、その逆も起こりえます。不況になると、需要が減って、生産や利益、賃金が減ります。そしてそのことが企業の投資や個人の消費を冷え込ませ、さらなる需要の縮小に繋がっていくのです。 経済ニュースのほとんどは、このサイクルのどこかに位置づけることができます。例えば百貨店で高額商品がよく売れている、というニュースなら「消費」、工場の新設なら「投資」、決算のニュースなら「利益」、といった具合です。