8月14日は水泳の日ーー京アニが描く青春スポーツアニメ『Free!』、“終わらない夏”を彩る楽曲を振り返る
「水は生きている」と一人水の中に飛び込み、夢中になって泳ぐ七瀬遙と後から飛び込んだ松岡凛の子供時代のシーンから始まったアニメ『Free!』(TOKYO MXほか)。2013年に放送された最初のシーンから8年。2021年、2022年にわたって前後編で構成された『劇場版 Free!-the Final Stroke-』で共に水の中に飛び込む遙と凛の姿が印象的に描かれシリーズが終結したものの、初放送から11年を経た今も人気が衰えることのない名作である。今年6月30日には遙の誕生日を祝うバースデーイベントが横浜BUNTAIで開催され、遙役の島﨑信長をはじめとした豪華キャストが集結。そこでは『Free! Series オーケストラコンサート2025』の開催と聖地である鳥取県岩美町でのイベントが発表され、ファンを歓喜させた。そして2024年も、夏がきた。 【写真】『劇場版 忍たま乱太郎』の主題歌を担当するなにわ男子 まさに“盛夏”と呼ぶにふさわしい2024年の夏。『第33回夏季オリンピック競技大会』(パリオリンピック)でも日本の競泳選手たちが世界の壁へ、遙や凛、桐嶋郁弥たちのように水の流れに腕を伸ばし、前へ前へと進んでいったことも記憶に新しい。熱くぎらつく太陽の光が注ぐ8月。14日は「水泳の日」、そんな水泳の日に、改めて『Free!』の音楽へと想いを馳せたい。 オリジナルアニメである『Free!』の最初のOPはOLDCODEXの「Rage on」。アニメのオープニング映像というものは饒舌に物語を見せていき、ストーリーが進んでいくと、その歌声、音、歌詞が物語と繋がっていく。『Free!』においては、打ち上げられる水、プールの中の遙と幼馴染の橘真琴、葉月渚、そして不敵な瞳を向ける凛、子供時代の姿から高校生の彼らが地元・岩鳶の町の景色の中に立つ姿へーー。楽曲は、ディストーションのかかったギターの音が轟き、Ta_2(Vo)のパワフルなボーカルが勢いを加速させる一曲だ。この幕開けから展開されていく登場人物たちの高校生活。もしかすると『劇場版 Free!-the Final Stroke-』まで、息つく暇もないほどの展開が続いていくことを「Rage on」で歌い上げていたのかもしれない、と思わせる本楽曲は、今にして思えばOPテーマとして実に正しく“饒舌”だった。 同じく『Free!』の象徴であり、時を超える名曲である、第1期EDテーマ「SPLASH FREE」。「SPLASH FREE」を歌うのは“STYLE FIVE”の5人だ。遙、真琴、凛、渚に竜ヶ崎怜を加えた5人による音楽ユニットである。作詞をこだまさおり、作編曲を渡辺泰司が手掛けたこの曲は、ポップなダンスチューンを軽やかに歌い上げる5人のボーカルが印象的。プールの中で思うままに音という波間を踊る彼らから、ラクダとともに水を求めて旅する遙と千夜一夜物語のようなアニメ映像が心に刻まれている人もいるだろう。EDらしく物語の余韻を味わうサウンドでありながらも、その楽し気な歌声と歌詞によって、彼らの競泳の情熱と仲間との絆への想いを宿したメッセージを感じることができるだろう。 第2期『Free!-Eternal Summer-』のED「FUTURE FISH」もSTYLE FIVEが担当。同じくこだまさおりが作詞を担い、本田光史郎が作曲したナンバーは、スタイリッシュでアッパーなパーティーチューン。ED映像は彼らの自由自在で無限の可能性を見せるような構成で、ファンを楽しませた。そして歌詞も彼らの競泳への熱を感じさせる言葉が並び、軽妙なサウンド感とともに5色のボーカルが躍る一曲に。進路について考えることになる彼らの紆余曲折の時間を描きながらも、希望ある未来へと手を伸ばす姿が浮かび、ストーリーへの切符となる歌だった。ちなみにSTYLE FIVEの歌う楽曲はすべての作詞をこだまさおりが担当し、彼らの紡ぐ物語の行く末を滲ませている。 そして、2023年にアニメ放送から10周年を迎え、さいたまスーパーアリーナで開催された『Free! 10th Anniversary -Memories of Summer-【前夜祭】』。『Free!』の劇伴作家である加藤達也による「TEAM KATOTATSU BAND LIVE」のライブのセットリストは人気投票で組まれたが、そのステージで1位となったのが「The final stroke」だった。『劇場版 Free!-the Final Stroke-』の劇伴曲であり、水の中から見上げる水面の光が浮かぶような、爽快かつドラマティックなサウンドで紡がれる。ストリングスとロックバンドの躍動感あふれる音が印象的なナンバーは、リレーで繋いでいく瞬間の胸が躍った記憶が蘇る一曲。劇伴曲はその一曲一曲に彼らの過ごしてきた時間と思い出が刻まれていることを改めて感じられ、さらに泳いでいるときの彼らの鼓動をも体感できる。ぜひ「水泳の日」にオススメしたい一曲だ。