実家の両親は「貯金500万円」ですが、持ち家があるから安心だと言っています。「老後は2000万円必要」とも聞きますが、本当に大丈夫でしょうか?
金融庁の審議会が2019年にまとめた「公的年金だけでは老後の生活費は2000万円不足する」という内容の報告書が報道されて以来、2000万円という金額が一人歩きしてしまっています。しかし本来はそれぞれの家庭の事情において、必要な老後の備えは異なります。 本記事では、貯金500万円で持ち家のある夫妻を例にとり考えてみましょう。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
老後に見込まれる収入を把握しよう
金融庁の報告書にある2000万円という金額は、公的年金などの収入より生活費などの支出が5万円程多くなるという調査結果からはじきだされています。つまり、老後資金を考える場合は家計の収支バランスを把握することが大切です。 ■年金はいくら支給されるのか 国民年金や厚生年金保険の受給見込み額は、毎年誕生月に送付されるねんきん定期便か、「ねんきんネット」というWebサイト上で調べられます。 2023年度の老齢厚生年金の満額は、平均的な収入(賞与を含む月額換算で平均標準報酬が43万9000円)で40年間就業した場合に月額22万4482円が夫婦で受け取れます。受給見込み額について詳しく知りたい人は、ねんきんダイヤルなどの相談窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
今後予想される支出を計算してみよう
総務省統計局が実施した「家計調査報告(家計収支編)」の2022年平均結果の概要を見ると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は23万6696円で、これに非消費支出を加えた額から実収入を引くと、毎月2万2270円の赤字となっています。 しかし、この統計の消費支出には住居費が1万5578円含まれています。持ち家でローンの返済が済んでおり、月々の住居費がかからないと考えれば、年金支給額である22万4482円内に生活費を抑えることは十分可能になってきます。 ■医療費・介護費 保健医療費(1万5681円)は、持病があるかないかなど、個人差により増える可能性が高いです。さらに入院しなければならない大病を患ったり、介護を必要とするようになってしまったりした場合は、月々の収入ではまかないきれず、貯金を切り崩すことになります。 医療保険に加入しているのであれば、1度契約している内容の詳細を調べ、どの程度の給付金が得られるのかを把握しておきましょう。 ■持ち家の修繕費 持ち家がマンションであれば、毎月修繕費の積立を行っているはずですが、戸建ての場合は修繕費に関する月々の支出は発生しません。一方で修繕が必要な事態となった場合、大きな金額が必要になります。 アットホーム株式会社が2023年に実施した調査によると、一戸建て(築年数平均38年)の修繕費の平均総額は約615万円です。修繕したことがある場所の1位は「外壁」で、1回目の修繕時の費用平均は約101万円でした。