廃棄に1000万円の「厄介者」モクズガニ 東京農大が養殖しブランド化へ【WBS】
北海道の「モクズガニ」は、これまで「厄介者」として、駆除の対象にもなっていましたが、東京農業大学はこのカニを「ブランドガニ」として売り出そうと、取り組みを始めました。 東京・世田谷区にある東京農業大学で、ある試食会が行われました。WBSの角谷暁子キャスターの前に出てきたのは、東京農大が独自に養殖し、ブランド化を目指す「北海道モクズガニ」。ハサミに「藻くず」のような毛が生えているのが特徴で、名前の由来にもなっています。 その味は? 「さっぱりした中にも、カニ味噌の甘さがあっておいしいです」(角谷キャスター) 試食会では、北海道モクズガニが近隣の住民や学生たちにも振る舞われました。試食会の参加者からは「おいしい。ホクホクしている。栗とエビを足して2で割ったような味」「カニみそは甘くておいしい。上海ガニに近い味がする」と好評です。 実はモクズガニ、中華料理で高級食材として人気の上海ガニの親戚とされています。しかし、東京農業大学・生物産業学部の上田智久教授によれば、「モクズガニは、今年でだいたい30トン処分されている。処分に1000万円かかる」といいます。
北海道の東に位置する風蓮湖。ここで、モクズガニは厄介者と言われています。漁業で使われる網を傷つけたり、ここで取れるニシンやカレイなどを食べ、傷つけるからです。 そこで東京農大の北海道オホーツクキャンパスでは、北海道モクズガニの養殖に着手。エサには地元で採れたカボチャやブロッコリーなどの廃棄野菜を活用して、良い味の研究を進めています。このプロジェクトには、LCC(格安航空会社)の「ピーチ・アビエーション」も参加。商品開発を共同で進め、地域の活性化につなげたい考えです。 「北海道に来る客の多くは甲殻類、タラバであったり毛ガニを求めて来る。そう考えるとモクズガニが地域の売りになる可能性があると思う」(上田教授) モクズガニは味が上海ガニに似ているため、上海などに輸出をすることも今後の展望の一つだといいます。 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授はモクズガニのような「未利用魚」の利用は重要だと話します。 「漁業で取った際に、実際に利用する魚は、タイやサケなど人気がある種類だけ。一緒に捕獲されてしまう魚などは、人気がない、売れないといった理由、あるいはモクズガニのように邪魔をするという理由で廃棄されてしまう」(入山教授) 世界レベルで見ても、漁獲される魚介類の約30~35%は未利用魚として廃棄されています。 「環境問題を考えると非常に深刻。未利用魚を養殖し、一般の家庭に届ける。未利用魚でもおいしいし、きちんと流通できるとなれば、未利用魚が広まる」(入山教授) ※ワールドビジネスサテライト