呂布カルマが「俺は特別に筋肉が好き」なワケ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『筋肉』について語った。 * * * ★今週のひと言「筋肉を愛してやまない俺が思う理想の筋肉とは?」 ちょうど世間が某格闘家のドーピング問題で盛り上がってるタイミングで、今回は筋肉について語っていきたい。 とはいえ、一見してわかると思うが、俺自身には語れるような筋肉はついていない。便利になった都市生活を営む上での最低限の筋肉でやらせてもらってます。 だけど、俺は筋肉が好きだ。というか、筋肉が嫌いな人はいないだろう。筋肉の量やつき方に好みがあるだけで、太ければ太い、細ければ細いなりの筋肉の美しさがある。そんな中でも、俺は特別に筋肉が好きだと思う。 以前ここでも書いたが、俺の世代は幼少期、筋肉漫画黄金時代の『週刊少年ジャンプ』を読んで育った。 その名のとおり『キン肉マン』のキン肉マン、『北斗の拳』のケンシロウ、『DRAGON BALL』の孫悟空、『ジャングルの王者 ターちゃん?』のターちゃん、『魁!!男塾』の剣桃太郎、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのジョジョなど、強い男はみんな筋肉モリモリだった。今でこそスタイリッシュなジョジョも初代はゴツいラガーマンだった。 子供たちは当然そんな筋肉に憧れたし、小学生で漫画家を志していた俺はそれらの漫画を模写することで最新の筋肉描写を吸収していった。 また、人体描写を突き詰めていくと、皮膚の下の骨格に対しての筋肉のつき方を研究するのは避けて通れず、逆にそれさえ頭に入ってしまえばどんなポーズも自然に描けるようになるのだ。 しかも、約30年前の主人公たちは何かあるとすぐに上半身裸となって戦うため、そのパワーの説得力として筋肉は必須だった。 その中には漫画的にデフォルメされた筋肉や、写真や骨格標本に基づいたリアルな筋肉があり、俺は徳弘正也先生や原哲夫先生のような緻密に描き込まれた、ひとつひとつパーツごとに取り外しができそうな筋肉に引かれた。 しかし、時はたち、ジャンプの主人公たちは特殊能力や武器で戦ったり、そもそも戦わなかったりで筋肉を必要とせず、みんな次第にスリムになっていった。 筋肉に取りつかれていた俺は依然みずみずしい筋肉が躍動していた『週刊少年チャンピオン』へくら替えしていくこととなる。今はまた独自の進化を遂げているが、当時の『グラップラー刃牙(バキ)』シリーズの板垣恵介先生や、『シグルイ』の山口貴由先生による筋肉描写は理想的だった。 最近で言うと筋肉キャラは、スリムでスタイリッシュな主人公を引き立てるためのやられ役として使われることが多く、普段シュッとしたキャラや着衣ばかり描いているせいか、最低限の骨格さえ理解できていない漫画家も少なくない。 いざ脱いでみてもヘンテコリンなただ太いだけの筋肉を見ると、それだけでその漫画への興味がうせてしまう。漫画家たるもの、女と男の裸はカッコよく描けるようにしておいてほしいものだ。 絵ではなく実際の筋肉は、そりゃ授かれるものなら授かりたいよね、ぐらいだ。俺が格闘技や肉体労働でもしていれば話は別だが、俺が筋肉を欲する理由はカッコつけのみだ。そして、ただのカッコつけだけのためにする筋トレはあまりにも大変すぎる。 俺と同じく、特に使い道もないのに頑張って見せ筋肉をつけまくってる人は、その見た目の男らしさと裏腹に自信のなさが透けて見える。ブランドものを着込んだり、ジャラジャラと大量のアクセサリーで飾るのと同義だ。これを書きながら気づいたが、それらすべてラッパーの標準装備ではないか......。 撮影/田中智久