井上尚弥が5.18英国グラスゴー世界統一戦で再び繰り出す「説明のできないパンチ」
WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(25、大橋)が16日、横浜の大橋ジムで会見を行い、5月18日に英国スコットランドのグラスゴーでワールドボクシングスーパーシリーズ(WBSS)の準決勝としてIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26、プエルトリコ)と対戦することが正式に発表された。井上は昨年10月にWBSSの1回戦で元WBA世界同級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を70秒でKOして世界に衝撃を与え、準決勝の相手は、ロドリゲスに決まったが、なかなか試合が大会本部から発表されず「二転三転してストレスがたまった」という。 やっとの正式決定に「ほっとしている」は、素直な心境だろう。 井上の試合はセミでメインは、WBSSスーパーライト級の準決勝で、地元グラスゴーのスター、ジョシュ・テイラー(英国)がIBF世界王者のイバン・バランチェク(ベラルーシ)に挑む試合。1万3000人収容の多目的アリーナ「SSEハイドロ」はフルハウスになることが予想される。 「ボクシング熱が高いなというイメージのある場所。(スコットランドに)予備知識はないが、初めての地で楽しみ」と井上。グラスゴーは、ロンドンから飛行機で、1時間強ほどかかるイギリス北西部のスコットランド最大の都市で、かつて中村俊輔が所属したサッカーチーム、セルティックがある街で知られ、同じく本拠地をここに置くレンジャーズとの「グラスゴーダービー」は「オールドファーム」と呼ばれ、街を挙げて大熱狂するスポーツ都市だ。地元ファンのお目当ては、テイラーだろうが、井上のインパクトのあるボクシングが観衆を引きつけることは容易に想像できる。 大橋秀行会長も「ボクシング発祥の地で尚弥が試合をする意義は大きい。夢のようだ」と語る。
対戦相手のロドリゲスは19勝(12KO)の無敗王者。一発はないが、スピード、パワー、ディフェンスと、3拍子揃った好戦的な万能タイプのボクサーで、ジャブから距離をつかみ試合を組み立ててくるストレートパンチャー。しかも単発に終わらず、2発、3発とまとめてくる。プエルトリカンらしく、至近距離からは、アッパー、フックを柔軟に繰り出しショートカウンターもある。 大橋会長は「互いに距離も同じで力が出し合える。モンスター同士の戦い。これまで見たことのないような技術戦になる」と警戒する。 井上も「勝つことだけを考える。去年のようなインパクトを出すのは大変。距離感は一緒で、日本人にないアッパー、フックもあり技術力が凄いなという印象がある。これまでと違った意味でのいいボクシングを見せたい」と慎重にコメントした。これまでと違った意味でのいいボクシングとは?と聞くと、「高い技術戦」と、繰り返した。 だが、こうも言う。 「気持ちの弱さを感じた。威圧感はなく、こいつやべえなというオーラはなかった」 井上は昨年10月に米国フロリダで行われたロドリゲス対ジェイソン・マロニーとの1回戦を直接観戦。試合後、リングに上がってフェイスオフした際にロドリゲスは目をそらしたというのである。 この日、井上は、会見後、大阪から遠征してきた世界挑戦経験のある元日本スーパーフライ級王者で、現在IBF世界同級4位など、4団体で世界ランキング入りしている石田匠(27、井岡ジム)と、4ラウンドのスパーリングを行った。まだ井上の体格はフェザー級ほどあって動きは重たかったが、上背のある石田をボディから攻め、強烈な右ストレート、左フックを利かす場面もあり、途中、石田はグロッキー寸前に追い込まれた。なんとか踏ん張り4ラウンドには、逆にラッシュを仕掛ける意地を見せたが、スパー後に出たのは溜息だった。