日本のAUKUS参画を期待しつつも「中国に配慮」するオーストラリアの事情
中国は東側だけに干渉の度合いを高めているわけではない
飯田)AUKUSにしても念頭に置くのは中国ですし、そうすると「南シナ海が」という方向になります。台湾との関係のなかで、金門島周辺で漁民の方が亡くなったという話もありました。中国としては、あの辺りにプレッシャーを掛けているのですか? 中川)中国から見て東側、つまり対日・対米という条件において、確かに日本にいるとその辺りの情報が大きく扱われますが、中国を中心にいろいろなところが問題を起こしているわけです。そのなかのワン・オブ・ゼムにすぎません。 飯田)たくさんあるなかの1つにすぎない。 中川)彼らが東側に干渉の力点を置いているというよりも、いままで通り干渉する度合いは高いけれど、均衡のもとに動いており、ハードルを一気に上げたとか急加速させたようなところは見えません。冷静に見なければいけないと思います。
内政が忙しく、大幅な変化を望まない各国
中川)また、インドネシアの大統領選挙や、台湾でも総統選挙がありました。インドも2024年に総選挙があるので、各国内政が忙しいのです。中国も反腐敗や国家安全の動きから見えるように、近年はグローバルより内政を重視する傾向にあります。毎年2月になると中央一号文件という文書が出るのですが、ここでは「三農(農業・農民・農村)」問題が語られていました。 飯田)三農問題。 中川)三農問題については2004年から20年近く、中央一号文件で語られているのです。中国の頭には、あくまでも「農業政策」があります。我々からすると「外交」ばかりが見えますが、内政や農民、腐敗という極めて前世代的な問題をまだ引きずっており、ドラスティックに外交環境を変えられるだけの能力はありませんし、そこまで求められるような状況ではない。それが前提としてあります。インドはあのような状況ですし、アメリカも大統領選があるので、いま各国は大幅な変化を望んでいないところがあります。