完璧美少女と完璧美男子のだまし合いラブ……「次にくるマンガ大賞」でランク入りの注目作
「恋せよまやかし天使ども」卯月ココさん
一般読者の投票で、次世代を担う漫画家の作品を選ぶ「次にくるマンガ大賞2024」(KADOKAWA、ブックウォーカー共催、読売新聞社協力)の結果が発表された。コミックス部門で9位に入った卯(う)月(づき)ココさんの『恋せよまやかし天使ども』(講談社)は、完璧な男女による「だまし合いラブ」で人気を呼ぶ作品だ。(高梨しのぶ)
「予想もしていませんでした。この作品を見つけて、投票してくださったことに感謝でいっぱいです」
幼い頃から絵が好きだった。本格的に漫画を描き始めたのは、2020年にデビューする数年前だった。少女漫画を愛読する中で、「普段泣かない人が泣くような、ギャップのあるヒーローが好みなのですが、私の『どタイプ』が、読んだ限りでは見つからなくて」と笑う。「自分で描いてしまおうと思いました」
『恋せよまやかし天使ども』は、常に完璧美少女を演じてきた高校生の桂おとぎと、同じ学園に通う完璧男子の一(にのまえ)刻(とき)の物語だ。それぞれ秘密にする裏の顔があり、互いに表の顔と使い分けながら、心を通わせていく。その彼らの姿や、ギャップが人気の作品だ。
「アンティーク要素が含まれる世界観が好き」と語る。作品には、自身の好みをにじませた。イメージに合う実在の学校を取材し、おとぎたちの通う学園の校舎に反映させた。連載前には多くのアニメを見て様々な種類のキャラクターを描けるよう研究した。作品を描くときは想像を膨らませるため洋画を見ている。
おとぎにとって初めての恋は、最初からうまくはいかない。「キャラクターが二次元的なので、恋愛の『包み方』は現実味を出そうと思っています。恋ってつらいこともあるという部分はかなり描きたかった」と語る。「両思いって奇跡的なこと。相手の心を動かすためには、自分が変わるしかない」。ヒロインを育てたかったのだという。
おとぎや刻の長い髪の毛束の動きの描き方にも気を配る。心の揺れ動きを表現するかのように、毛先まで緩やかな曲線を描き、顔には毛束の影まで映る。