青森、函館市の「ツインシティ提携」 今年で35周年 津軽海峡またいだ親交、草の根で深まる
青森市と北海道函館市が幅広い分野での交流を目指す「ツインシティ提携」が今年35周年を迎えた。経済、観光はもとより、文化やスポーツの分野でも両市民が往来して草の根で親交を深めており、津軽海峡をまたいだ絆で結ばれている。17日には函館市で記念式典が開かれ、関係者らが節目を祝う。 ツインシティ提携は1989年3月、青函トンネル開通1周年を機に調印された。2016年3月には北海道新幹線が開業、両市の結び付きはさらに強まった。各交流事業は行政主導だけではなく、民間によって自主的に行われているものも多いのが特徴だ。 函館側と長年にわたって交流を続けている団体の一つが、青森ジュニアオーケストラ(對馬文敏団長)。1976年に結成され、現在は青森市内外の小学生から高校生までの26人が所属。約20年にわたり、函館ジュニア・ドリーム・オーケストラと互いの定期演奏会に友情出演している。 交流のきっかけは2000年ごろ、ジュニアオーケストラの結成を目指す函館側の音楽家らが視察に訪れたことだったという。指導者の確保や団員の減少など、共通の悩みを分かち合いながら関係を育んできた。 青森ジュニアオーケストラの今年の定期演奏会は17日にリンクモア平安閣市民ホールで行われる。10月27日には、日帰りで訪れた函館の団員や指導者らを交え、市中央市民センターで合同練習会に臨んだ。チェロを担当する沖館中1年の奥山竜之介さんは函館側との交流に「演奏がうまくて参考になる。演奏会では練習した成果を全力で出して、気持ちよく終わりたい」と話した。 對馬団長は「子どもたちは交流をとても楽しみにしている。函館側の子と友達になって、練習が終わってもアンサンブルする様子を見たりすると、われわれ指導者の心も温かくなる」と笑顔を見せた。 青函交流はスポーツ分野でも盛ん。青森市サッカー協会の40代以上の選手たちは10月27日、函館市で地元サッカー協会との交流試合に臨んだ。関係者によると、1969年に青函のクラブチーム同士の私的な交流試合が行われたのがきっかけという。現在は例年夏と秋、両市持ち回りで世代別の試合が行われており、選手たちが爽やかな汗を流している。 青森市協会シニア委員会事務局の木村大作さんは「交流試合の際には懇親会も開かれていて、参加者には指導者も多いのでお互い情報交換している。県をまたいだ仲間づくりにもつながっていて、今後は同じような交流が他地域にも広がっていけばいい」と期待を込めた。 ツインシティ提携35周年を受け、今年は両市で小学生向けのロボコンイベントが、青森市では青函圏の料理人らによるフォーラムが開催された。 17日に函館市のホテルで開かれる記念式典では、青函交流団体による記念演奏のほか、両市の商業高校とセブン-イレブン・ジャパンが連携し、生徒のアイデアを基に開発された商品のお披露目などを行う。青森市の西秀記市長は「35周年を節目に今後とも両市で手を取り合い、さらなる交流の促進と変わらぬ友好関係を築いていく」としている。 ▼交流事業 近年は微増傾向 青函ツインシティの交流事業数は、提携当初の1989年度に55件でスタートした。2001年度にピークの149件を記録した後、減少が続き、最近は微増傾向に転じて110件台で推移している。今後のさらなる交流活性化に向け、事務局の青森市連携推進課は「新型コロナウイルスの影響を受けても着実に交流が続いている。事業への後援やイベントの周知など交流団体と協力していきたい」としている。 交流事業は行政主導の写真コンテストやフォーラムのほか、民間のスポーツ、文化団体による大会や行事、商工関係団体によるビジネスマッチングなど、さまざまな分野で連携が行われている。 09年度に129件だった交流件数は10年度に104件まで急落。特に教育・文化・福祉交流事業の落ち込みが顕著だった。東日本大震災の影響は限定的とみられるが、交流団体の高齢化や担い手不足などさまざまな要因が絡んだとみられる。ただ、15年度には北海道新幹線開業を迎え、その後は産業経済交流事業を中心に増加傾向となっている。直近の23年度は全体で116件。 最近では、21年度の「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界文化遺産登録をきっかけに、両市を行き来して遺跡を巡るツアーが始まるなど新たな取り組みも見られるが、最盛期の交流事業数と比べると及んでいないのが現状だ。今後のツインシティ提携40周年、50周年へ向け、同課の担当者は「次の世代に青函交流の輪が広がっていくよう取り組みを進めていきたい」と話した。