なでしこJの最大の武器、一体感はなぜ生まれたか
女子ワールドカップ準決勝で、日本はイングランドを2-1で破り、2大会連続の決勝進出を決めた。アディショナルタイムのゴールで試合が決まるという、劇的な結末だった。イングランドに押し込まれる時間帯も長かったが、キャプテンの宮間あやは、苦しい展開の中でも「最後まで勝利を信じられるし、仲間を信じられることが私たちの強み」だと話す。チームの一体感は試合を重ねるごとに増している。その一体感は、どのようにして高まってきたのか? ここでは5つの要因を挙げたい。
1.控え選手のモチベーション 今大会を見ていると、練習でもサブの選手が積極的にチームを盛り上げているのが印象的だ。特にMF澤穂希は今大会、ベンチからも練習中も、積極的にチームを盛り上げている。「こういう凄い場所に居られることはすごく幸せなことですし、一瞬一瞬を楽しんでいます」と話す、大黒柱の姿勢がチームの意識を高めているのは間違いない。 イングランド戦で先制ゴールを決めた宮間は、すかさずベンチに走っていき、歓喜の輪ができた。控え選手も、先発している選手と同じぐらいの気持ちで戦えていることは大きい。佐々木則夫監督はグループリーグで23人全員を起用するという大胆な采配を見せたが、一度全員がピッチに立ったことで、全員の気持ちを高めたことも功を奏している。 また、FW大野忍は「私たちは試合に出ている11人だけけじゃなく、安藤選手含めて23人で戦っている」と話す。初戦で離脱を余儀なくされたFW安藤梢の存在も、このチームの一つのモチベーションだ。 2.チャンピオンとしての経験 今大会のなでしこジャパンは、4年前の前回大会の優勝メンバーが17人に上る。その経験値が、チームに自信と落ち着きをもたらしている。実際、これまではスタッフがモチベーションを高めるための映像を作成することもあったが、今大会では使用していないという。 選手間でお互いに高め合うことができているからだ。また、決勝戦の大舞台を前にしても、選手達に余計なプレッシャーや緊張は感じられず、むしろ良い意味でリラックスした印象を受ける。実際、選手達からは「目の前の試合を楽しみたい」という声が聞こえてくる。大舞台を楽しむ方法を知っているベテランの存在は大きい。 3.選手間のミーティング 選手間でのミーティングは、なでしこジャパンにとって欠かせないルーティンワークでもある。練習中はもちろん、ホテルに帰ってからも、自分たちのプレーと徹底的に向き合い、修正を重ねている。2011年の優勝も例外ではない。大会直前に行われたアメリカとの親善試合で2連敗を喫した選手達は、この2試合を見直し、守備面の課題を徹底的に話し合ったという。 その結果、本大会でなでしこジャパンはセットプレーからの失点をゼロに抑えた。なでしこが試合を重ねるごとに強くなるのは、このミーティングで意識を共有できていることも大きい。準決勝のイングランド戦前にも、対策ビデオをチームミーティングと選手間ミーティングで繰り返し見ながら、話し合いを重ねたという。