登戸研究所に関する資料を展示している登戸研究所平和資料館

　長野県駒ケ根市教育委員会は12日、太平洋戦争末期に上伊那地方などに疎開した旧日本陸軍謀略機関・登戸研究所に関する資料を常設展示する「登戸研究所平和資料館」を、同市中沢にある市民俗資料館（市有形文化財）の一角に開設した。内覧会には、関係者ら約30人が出席。地元に残る戦争遺産をいつでも目の当たりにできるようにすることで、歴史の教訓を次世代につなぎ平和の尊さを考える場になることを願った。 　市民俗資料館1階にある一室約66平方メートルを補修し、展示場所として整備した。同資料館は、かつては旧中沢国民学校の木造校舎として使われていて、登戸研究所の疎開先の一つに当たる戦争遺跡でもある。上伊那地方の住民有志ら約100人でつくる「登戸研究所調査研究会」が運営を担い、同研究会が収集してきた資料や解説パネルなどを展示する。点数は180点で、今後さらに充実させたい考え。今年新たに見つかった文献のほか、爆薬を入れたとみられる木箱、化学実験器具などの資料を展示。解説パネルを通して、研究内容や本土決戦に備えて上伊那地方に疎開してきた経緯、地元住民らの証言などを「子どもたちにも分かりやすいように」紹介している。開館日は会員が在館し、ガイド役を担う。 　近くの施設で行われた開館記念式典で、伊藤祐三市長があいさつ。「戦争の記憶を市民や来館者の皆さんと共有し、平和の大切さを考える場にしたい」と述べた。上伊那で戦後長らく隠ぺいされてきた研究所の実態は、1989年にスタートした赤穂高校の生徒有志らによる、関係者への聞き取り調査で明るみになった。当時の活動に携わり、今は同研究会世話人の一人の池田幸代さん（52）は「これまでの道のりを考えると、すごいこと」と喜び、「資料館を軸に、研究所をテーマにした平和フィールドワークも行っていければ」と話した。 　開館日は土・日曜日と祝日で、時間は午前9時～午後5時。平日は予約制で、希望者は2週間ほど前に市立博物館（電話0265・83・1135）に申し込むこと。12～2月は休館。入場料は無料。 　同研究所は、旧日本陸軍が開設した秘密戦兵器・資材を研究開発する組織。神奈川県川崎市で研究を進めていたが、1945年に本土決戦に備えて、一部が上伊那地方に疎開したとされる。