「意外と知らない」『シティーハンター』の「最終回」 リョウと香の関係は、結局どうなった?
アニメ版「最終回」はどう描かれた?
では、オリジナル要素が多かったアニメ版の「最終回」はどうだったのでしょうか。 最初のTVシリーズ『シティーハンター』(1987年放送開始)の最終回「史上最強の敵!! リョウと香のラストマッチ」(前後編)は、原作にはないオリジナルストーリーです。日本進出をたくらむロードスマフィアはリョウを狙い、切り札として香を人質に取ります。 ロードスマフィアを倒したリョウですが、乗っていた船が沈没しそうになると、香だけ逃がそうとします。防弾ガラスで隔てられていたため、原作にあったキスシーンが再現されるかと期待したファンも多かったようですが、残念ながら描かれることはありませんでした。 結局、ふたりとも無事に助かりましたが、ふたりの関係が大きく進展することはありませんでした。実は翌週から『シティーハンター2』が始まることもあって、最終回らしい最終回ではなかったのです。 ●ふたつ目のアニメ版最終回 では、続いて『シティーハンター2』(1988年放送開始)の最終回を見てみましょう。「グッドラックマイスイーパー ふたりのシティストリート」(前中後編)は、原作の23巻あたりのエピソードをアニメ化したものです。アメリカからやってきたリョウの元パートナー「ブラッディ・マリィー」をめぐるストーリーです。 敵を倒した後、マリィーは婚約者と帰国します。リョウと香はマリィーが乗った飛行機を見送りますが、リョウは自然に香の肩を抱き、香は頬を少し赤らめました。その後、ミニクーパーで都心に戻ってきたふたりは、神宮外苑の絵画館のあたりでデート(としか言いようがない)を楽しみます。これまでにはあまりなかった描写です。 さらに、まるで新婚家庭のようにエプロン姿の香が豪華な朝食を作ります。香の両肩に手を置きながらリョウが感謝を伝えると、完全に香はキス待ちの顔になりますが、これはオチに向けてのフリでした。最後は114tのハンマー(通算114話だっため)が炸裂してエンディングとなりました。とはいえ、リョウと香の関係はかなり進展したと考えていいのではないでしょうか。 このエピソードには、生年月日も不明だったリョウが、香に「誕生日」と「年齢」をプレゼントされ、お礼のキスを香のおでこにするシーンもあります。誕生日として香が決めた3月26日は、ふたりが初めて出会った日でした。 ●3つ目と4つ目のアニメ版最終回 3か月のインターバルを置いてスタートした『シティーハンター3』(1989年放送開始)の最終回「グッバイCITY さよならの贈りもの」(前後編)は、オリジナルストーリーです。リョウを恋人の仇として狙うスイーパー「ソフィー」が登場します。 ソフィーとリョウの最後の決闘では、香が「リョウが死んだら生きてたって仕方ない!」と叫ぶことでソフィーが復讐を思いとどまります。エンディングでは、リョウが香の肩を恋人のように抱いて歩いていました。 『シティーハンター‘91』の最終回「鎮魂のララバイ 遠い国からきた貴公子」は、ハンスという名の金髪の殺し屋が香に思いを寄せながら死んでしまうというストーリーでした。ここでは香とハンスの「恋愛成就」を祝うリョウの姿が描かれています。 こうして振り返ってみると、やはりリョウと香の関係が進展したのは、原作の最終回だったといえるでしょう。 『シティーハンター』の連載終了から10年後、北条司先生が『シティーハンター』のパラレルワールド作品として描いた『エンジェル・ハート』では、香は正式にリョウのプロポーズを受けています。 とはいえ、ふたりの関係の結末を最後まで描かず、ファンの想像に委ねているのが『シティーハンター』の良いところだといえるでしょう。今後、制作される新作アニメや新作ドラマでふたりがどのように描かれるのか、楽しみに待ちたいと思います。 ※「冴羽リョウ」の「リョウ」は、正しくは「けものへんにうかんむりなしの寮」
大山くまお