挑戦は“付加価値”生み出すため--スポーツジム「FREE STYLE ASSIST」代表・湯山介人さんが歩む唯一無二のトレーナー人生
データにもとづく「いいね」…ラプソード導入の効果
中でも需要が高まっているのが、野球の指導だ。少年野球チームの選手から独立リーガーまで、幅広い年代を担当。選手たちはおのおのチームに所属しているため、チームの指導者に「何が足りていなくて、何を指導すればいいか」を事細かに聞くことを忘れない。湯山さんは「あくまでもトレーナーは裏方。チームの監督やコーチが望むものと違う方向にいくとまずいので、しっかり話し合います」と力を込める。 夏以降の時期は高校入学前の中学3年生を受け持つ機会が多い。この場合は高校の指導者から「入学までにこういう選手にしてください」と依頼を受け、それに沿った指導を行う。例えば打力を求められれば体重や筋量を増やし、走力であれば瞬発的なパワーをつける。投手力を上げるためには可動域を広げる。同じ野球、同じ年代でも、取り組むトレーニングは選手によって大きく異なるという。
今年8月からは計測機器「ラプソード」を導入した。金銭的な問題で導入に踏み切れないチームは多く、プライベートで訪ねて使い方を教わったり、計測したりする指導者、選手がいるほど関心度が高い。湯山さんはラプソード導入の効果について次のように語る。 「選手が投げるのを見て『球が伸びているね』、『キレがあるね』と言っても、それは客観、主観でしかなくて、昨日と比べてボールがどのくらいの数値変化をしたかはデータを計らないと分からない。『いいね』と言っても何がいいのか分からなければ言った『いいね』が無責任になる。例えば『昨日のストレートは1800回転だったけど今日は2000回転いっている』などと数値的なデータをもとにした声かけをすれば、無責任な指導は避けられる。何がいいのか分かるという点で、導入してよかったです」
現在進行形で進む“自分にしかできないこと”の追求
ラプソードに関しては湯山さん自身も「勉強中」。ラプソードの数値変化を根拠に、目的に応じた最適なトレーニング方法を少しずつ確立している。自らセミナーに参加するほか、チームの指導者からフィードバックを受けることもある。
次々と新たな取り組みに挑戦するのはやはり、湯山さんにしかできない指導を通して“付加価値”を生み出すため。今後については「いろんな『初』をやりたい。やりたいことが多すぎます」と笑いつつ、部活動の地域移行に伴うチーム設立やアスリートのセカンドキャリア支援など、いくつもの野望を抱く。 「自分の身体の可能性を伸ばしたいアスリートの方、ラプソードで科学的にうまくなりたい野球関係者の方、私まで連絡いただければ必ず力になります」と呼びかける湯山さんの、次なる挑戦に注目だ。
(取材・文・写真 川浪康太郎)