JT社員“うつで休職”後に就労可能と診断も「復職」認められず自動退職に 地位の確認求め会社を提訴
「きちんとAさんを復職させる必要があった」
この間、Aさんは2024年8月に、労働組合の日本労働評議会に加盟。同年9月から10月にかけて4度の団体交渉を実施するも決裂し、訴訟に至った。 原告代理人の岩本拓也弁護士は本件訴訟について次のように解説する。 「本件の一番の争点となるのは、休職期間満了による退職扱いの有効性です。 Aさんが休職するに至った理由は、抑うつ状態の症状であり、復職審査では症状が治ったかどうかが、1番問題になるはずです。 それにもかかわらずJT側は『職場とのマッチング』や『周囲の負荷』などを理由に復職不可と判断していました。 また、JTは大手企業であり、Aさんの働ける就労場所・職種があるはずです。受け入れ体制を整えるなどして、きちんとAさんを復職させる必要があったのではないでしょうか。 しかし、JTはそうしたことをせず、休職期間の満了によってAさんを退職に追い込むために、形だけの復職審査会を実施していたのではないかと考えています。 ですから、われわれの立場としては、休職事由が消滅していることから、Aさんの自動退職扱いは無効であり、かつ第1回の復職審査会以降の賃金支払いが認められるのではないかということで、地位の確認と賃金の支払いを請求しています」 また、同じく代理人を務める加藤桂子弁護士もJT側の責任について、以下のように訴えた。 「JTの就業規則には、休職期間中、休職となった事由が消滅した場合には、速やかに復職させるものとするといった記載があります。 また、会社が必要と認めた場合、精神疾患から復職する者がいる場合には、復職支援プログラムが利用できるといった制度も存在しています。 それにもかかわらず、そうした復職に向けた対応をしなかったというのが、本件の事案であり、従業員の働く環境を整える義務を果たさなかったという点で、大きな問題ではないでしょうか」
「何をすれば復職できるのか、具体的に示されなかった」
この日、会見に出席したAさんは、訴訟に至った経緯について次のように語った。 「もともと自分はたばこが好きだったので、分煙や喫煙環境の整備にフォーカスできる会社はほかにはないと思い入社し、やりがいをもって前向きに働いていたと認識しています。 2度目の休職後は速やかに症状が回復したこともあり、その後は複数の資格を取得したり、放送大学に通ったりするなど努力を重ねたつもりです。 最初の復職審査後には、会社から指示を受け、発達障害専門のリワークのプログラムにも参加し『今度こそ復職できるだろう』と思いましたがかなわず、その後の審査でも何をすれば復職できるのかは示されませんでした。 そこで、自分ではこれ以上どうしようもできないと思い、日本労働評議会に助けを求めて団体交渉をやってきましたが、それも決裂となったことで、今回訴訟を決意しました」 なお、初回期日は未定で、Aさん側の代理人・労組の双方は、団体交渉の決裂後、これまでにJT側とのやり取りなどは特に行っていないという。
弁護士JP編集部