宇佐市親子殺害に死刑判決…「覆面の男から動画撮影の手伝い頼まれた」主張に「不自然、不合理」
大分県宇佐市の民家で2020年、親子を殺害して現金を奪ったとして、強盗殺人罪などに問われた会社員佐藤翔一被告(39)の裁判員裁判の判決で、大分地裁は2日、求刑通り死刑を言い渡した。被告側は無罪を訴えていたが、辛島靖崇裁判長は複数の間接証拠から被告による犯行と判断。「借金返済のために2人の生命を奪った刑事責任は極めて重大」と述べた。被告側は即日控訴した。 【写真】2人の仏壇に向かい手を合わせる次男(6月24日、大分県宇佐市で)
判決によると、佐藤被告は20年2月2日、同市安心院町、山名高子さん(当時79歳)方に侵入。高子さんと長男の博之さん(同51歳)の首などを包丁やはさみで多数回突き刺して殺害し、少なくとも現金5万4000円を奪った。
公判では、殺害を示す直接証拠がない中、被告側は起訴事実を全面的に否認し、被告が犯人か否かが最大の争点となった。
判決は▽犯行時間帯に現場近くで被告が使っていた車から高子さんの血痕が検出された▽現場に残された靴跡と、被告が事件前に購入した靴の特徴が酷似し、その靴を事件2日後に捨てていた▽借金(借入残高167万円)返済に追われていた被告が事件翌日に原資不明の5万4000円を手にしていた――ことなど複数の間接証拠を踏まえ、「被告が犯人と優に認められる」と判断した。
公判で被告は「覆面の男から動画撮影の手伝いを頼まれ、現場近くまで車で送迎し、報酬をもらった」などと主張したが、判決は被告の供述について「不自然、不合理」として信用性を否定。弁護側は、被告の車内で見つかった第三者の血痕などから被告以外による犯行の可能性も訴えたが、「第三者のものが検出されることはありふれた事象」などとして退けた。
そのうえで、被告は借金を返済するため窃盗目的で侵入し、2人に出くわしたため、口封じのため殺害したと認定。高子さんを40回以上、博之さんを50回以上突き刺しているとして、「執拗かつ残酷で生命軽視が甚だしい」と非難した。事件後に車内を清掃するなど証拠隠滅を図り、公判でも不合理な弁解を続けたとして、「死刑の選択はやむを得ない」と結論付けた。