“コロナ疲れ”あるかもしれないが「長期戦の覚悟を」安倍首相が示した危機感
対策を長期にわたって「繰り返す」必要
政府の専門家会議も19日に発表した提言の中で、「オーバーシュートを未然に防ぐこともあり得るが、国内外の現在の感染状況を考えれば、短期的収束は考えにくく長期戦を覚悟する必要がある」と同様の見方を示している。 9日に出した見解では、「社会・経済活動の維持と感染拡大防止のバランスを取り続けるような対策を繰り返すことが、長期にわたって続くと予想される」と今後の取り組みの展望を記している。 この記述のイメージは、たとえば感染が拡大した地域で、イベントや外出自粛など「人と人との接触を可能な限り控える」対策を進めることで流行がいったん収束に向かう、そうなれば感染リスクの低い活動から徐々に解除し、社会・経済活動を復活させていく――。感染症対策としてはできるだけ長期が望ましいが、それがあまりに長過ぎれば経済活動が崩壊してしまうので、その「バランスを取り続ける対策を繰り返す」ことを見据えているといえる。 さらに見解では「再流行」の可能性にも言及している。国内での流行を抑制できたとしても、世界的な流行が収まらなければ、国外からウイルスが持ち込まれることが予想されるため、「しばらくは、いつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれる」という。
いま見ている数字は「2週間前の新規感染者」
政府と専門家会議が恐れるのは、「制御できない感染の連鎖」だ。それは爆発的な感染拡大(オーバーシュート)の発生を招き、日本が目指している「感染のスピードを極力抑えながらピークを後ろ倒しする」という戦略を一気に崩しかねない。 このところ、日本では単に感染者が増えているだけではなく、東京や大阪などの都市部を中心に感染経路が追えない感染例が急増している。 安倍首相は、この点について28日の会見で危機感をあらわにした。「感染のつながりが見えなければ、その背景にどれぐらいの規模の感染者が存在しているのか知ることができない」。さらに欧米の例からの試算をもとに「ひとたび爆発的な感染拡大が発生すると、わずか2週間で感染者数が今の30倍以上に跳ね上がる」と具体的な推計を挙げた。 「私たちが毎日見ている感染者の数は、潜伏期間などを踏まえれば2週間ほど前の新規感染の状況を捉えたものにすぎない」 現在の数字は2週間前の感染状況を示すものであり、今の感染状況は2週間後にならないと分からない。安倍首相はそう警告し、「つまり今すでに爆発的な感染拡大が発生していたとしても、すぐには察知することができない。2週間たって数字となって表れたときには、患者の増加スピードはもはや制御できないほどになってしまっている。これがこの感染症の最も恐ろしいところだ」と述べた。 このウイルスは欧米でも数日で急激な増加を見せる例が頻発しており、もしそれが日本で起これば「医療崩壊」の危機にもつながるとも述べた。 「幾つかの国々では連日、数百人規模で死者数が増えており、増加する重症者に十分な医療を提供できていない。まさに医療崩壊とも呼ぶべき事態も発生している。これは決して対岸の火事ではない」 そして「最大限の警戒をあらためて国民の皆さまにお願いする」とウイルスとの長い戦いへの協力を求めた。