ハリウッドへお返しを(5月24日)
海の向こうで生まれた時代劇が、旋風を巻き起こしている。米ハリウッド制作のドラマ「SHOGUN 将軍」は、世界市場を見据えた作品ながら、出演者の大半は日本人だ。大スクリーンの映画並みの映像美と濃密な筋立てで関ケ原の戦い前夜を描く▼今春、大手動画サービスが配信して以来、国内外で絶賛の声がやまない。刀の抜き方、ふすまの開け閉め、茶道の作法、時代考証に裏打ちされた衣装や調度品…。当時代の所作や作法、美意識を忠実に再現したと評価される。プロデューサーを務めた主演俳優の真田広之さんが細部にこだわり、目の肥えたドラマのファンや批評家をうならせた▼現代では、日本人でも武家文化に触れる機会は多くない。会津若松市の県立博物館は近年、体験プログラムに力を入れている。今年も武家茶道や七絃琴[しちげんきん]、能楽、刀剣など会津藩とゆかりのある伝統文化を紹介する。観光客は歴史的背景も学べる。城下町への理解は一層深まる▼ドラマは続編制作が決まった。訪日客や若い世代は本物志向が強いとされる。将軍家への先達の忠義に偽りはない。願わくは、一途[いちず]な武士道をハリウッドにお返しする会津発の動画も欲しい。<2024・5・24>