東京メトロなど大型IPO続く、小規模上場ばかりの日本市場に変化か
(ブルームバーグ): 日本で今後数カ月の間に大型の新規株式公開(IPO)が控えている。過去10年間、1億ドル(約145億円)に満たない資金調達がほとんどだった市場を活性化させる可能性がある。
東京地下鉄(東京メトロ)は先週、IPOで約3196億円(22億ドル)の調達を目指していることを明らかにした。国内では2018年のソフトバンクによる210億ドル規模のIPO以来の大きさの上場となる見込みだ。また米カーライル・グループ傘下の理化学機器メーカーのリガク・ホールディングスは、来月のIPOで約1096億円の調達を目指している。
日経平均株価が8月5日に付けた今年の日中最安値から20%以上回復したこともあり、新規上場が勢いづこうとしている。今年度、日本の株式資本市場(ECM)の規模は20年ぶりの高水準に達している。先月の株式市場の暴落も新たな株式への投資家の需要を減退させることはなかった。
ロベコ香港のポートフォリオマネジャー、ケルビン・レオン氏は日本のIPOの環境について「状況はポジティブだ」と評価。「ファンダメンタルズは良好でバリュエーションがそれほど厳しくなければ、買いの好機だろう」と述べた。
日本では14年以降、1000件以上のIPOが実施された。ブルームバーグが集計したデータによると、そのうちの90%近くが1億ドル未満の調達にとどまる。国内でIPOの資金調達額は今年に入って14億ドルに達しており、東京メトロとリガクの上場を受け23年全体の44億ドルに迫る勢いだ。
ユニオン・バンケール・プリヴェ(UBP)でロングショートファンドを運用するズヘール・カーン氏は、「行き過ぎた動きが一部修正されたため、今の市場は実際かなり健全な状態にある」と述べた。
同氏は、人工知能(AI)や観光業といった過剰な関心を集めていたセクターの企業について、コロナ後の経済回復の恩恵を受け8月の暴落前にバリュエーションが上昇した可能性があると指摘。「だが、ほとんどのセクターは、今が市場に参入しIPOを行う上で良い時期だと思う」と述べた。