不育症治療を産科医が解説 妊娠後流産を繰り返す原因とは? 検査・治療費はどうなる?
不育症の検査は何をする? 血液検査・染色体検査など産婦人科で受けられる不育症の検査項目について教えて
編集部: 不育症の原因を確認するにはどのような検査がありますか? 松見先生 先程述べた子宮の形態の異常の有無を確認するための検査としては、超音波断層法やMRI、子宮鏡、子宮卵管造影などがあります。これらにより、双角子宮や弓状子宮などの先天性子宮形態異常(子宮奇形)、粘膜下筋腫、子宮腺筋症などの疾患の有無を確認することができます。 編集部: そのほかには? 松見先生: 高プロラクチン血症、甲状腺機能低下症、糖代謝異常などの内分泌代謝異常が疑われる場合には、血液検査によって、プロラクチンの濃度、血糖値やHbA1c、TSHやfT4といった甲状腺機能に関するホルモンの値を調べます。夜間にプロラクチンの濃度が高くなる潜在性高プロラクチン血症という病態もあるため、ホルモン剤を投与してから濃度を測ることもあります。そのほか、血液凝固異常の原因となる凝固因子や抗リン脂質抗体の有無を調べたり、染色体検査によりご夫婦の染色体異常の有無を検索したりします。 編集部: さまざまな検査項目があるのですね。不育症の検査はいつ受けるのが望ましいのでしょうか? 松見先生: 早く検査した方が良いという考えもありますが、流産したあとではまだ体のホルモンバランスが変化しており、正しい検査結果が得られないこともあります。そのため流産後、初めて月経が来たときに受診し、検査を受けるのが良いと考えられています。
不育症の治療法が知りたい 治療費は保険適用になる? 妊活や治療で国から助成を受けられるって本当?
編集部: 不育症の治療にはどのような方法があるのですか? 松見先生: 検査によって原因がわかれば、それぞれに応じた治療を系統立てて行います。たとえば甲状腺機能低下症などの甲状腺疾患がある場合には、妊活をする前に甲状腺機能を正常にするため、甲状腺ホルモン剤の内服を行います。治療費は保険適用になるものもあれば、保険適用にはまだなっていないが先進医療として認められているものもあります。そして、まだ、先進医療として認定される前の段階の自費診療でしか受けられないものもあります。詳しくは医師に確認してください。 編集部: 具体的にはどのような治療法があるのですか? 松見先生: 先ほどあげた4つの原因に対しては、主に次のような治療法が検討されます。 ・子宮の形態の異常 →手術によって子宮の形態異常を改善する ・高プロラクチン血症や甲状腺機能低下症などの異常(内分泌代謝異常) →血中のプロラクチンや甲状腺ホルモンの数値を是正するための内科的治療を行う ・免疫の異常 →ステロイドを内服する、ステロイド抵抗性の免疫異常にはタクロリムスという新しい薬剤を使用することもある。漢方薬は柴苓湯(さいれいとう)が用いられる。イントラリピッドという脂肪乳剤の静脈内投与(まだ先進医療として認定されてはいない)を行う。 ・血液凝固異常 →過剰な凝固機能を抑制するために、アスピリンの内服やそれに加えてヘパリンの注射を行う低用量アスピリン療法とアスピリン・へパリン併用療法がある。 編集部: 妊活や治療で国から助成を受けられるのですか? 松見先生: 現在、厚生労働省は将来的な保険適用を見据え、先進医療として実施されるものを対象に、検査に要する自費の費用の一部を助成しています。ただし、対象者や対象となる期間、助成額などには決まりがあるため、詳しくは自治体もしくは医療機関に確認してください。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 松見先生: 不育症の診断や治療はわかっていないことが多く、ガイドラインも年々改訂されている分野です。そのためご自分でもよく調べて、適切な医療機関を受診することが大切です。その際には不育症に対する知識と治療経験が豊富な医師を選択することが基本だと思います。また、ご夫婦のお話をよく聞いてくれる医師を選ぶことも大切です。医師に話を聞いてもらうだけでも妊娠の継続率が増えるという報告もあるので、流産を繰り返す場合は安定期に入るまで、毎週クリニックを受診して医師や看護師、カウンセラーなどのコメディカルに話を聞いてもらうことも、不育症の治療につながります。治療費は概ね10万円くらいでしょうか。ぜひ参考にしてみてください。