東芝がメモリー事業を分社化へ 外部資本導入も視野「財務体質を強化」
東芝は27日、半導体メモリー事業部門を3月31日をめどに分社化する方針を発表した。同社のメモリー事業は、原子力事業とならぶ主力事業。同日会見した綱川智社長は、適時投資による競争力の強化と、米原子力事業で生じる可能性がある数千億円規模の損失の影響を抑制するためだと説明。外部資本の導入も視野に入れ、綱川社長は「財務体質の改善」を繰り返した。 【動画】東芝が半導体メモリー事業の分社化発表で記者会見
米原子力事業で大規模な損失の可能性
同社の半導体メモリー事業は、パソコンの記憶装置やカメラのメモリーカードなどに使われるNAND型フラッシュメモリーを製造、販売する。2015年度売上高は8456億円と連結売上高全体の約15%を占め、営業損益も1100億円と黒字を計上した優良事業。稼ぎ頭を分社化する決断について、綱川社長は2つの理由を挙げた。 一つ目は、メモリー事業への継続投資による競争力を一層強化する狙い。高性能な3次元フラッシュメモリーの開発や安定的なストレージ事業の拡大に対応するには「大規模な投資に適時に行える体制が不可欠」だと強調した。 二つ目は、東芝グループの資本増強の実現。子会社である米原子炉メーカー、ウェスチングハウス(WH)による米原発建設会社のCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)の買収に関して、数千億円規模の損失の発生が予想されるため、「財務状況に与える影響を最小限化するため、取りうる現実的な施策を検討した」と説明した。大規模損失の可能性を考えると今年3月末までにグループの財務体質を強化する必要があった。 分社して誕生する新会社は、外部資本の導入も視野に入れる。望ましい出資先を問われた綱川社長は「さまざまな可能性はあるが、いろいろな方々からご提案をいただき、よくよく吟味して聞いていきたい」とした。 長年にわたる不正会計の発覚から経営再建を目指す東芝。会見では厳しい質問も飛んだ。分社化によって「債務超過」を回避できる手応えはあるかとの問いには「決算で3Qの数字が確定してないが、それに向けて資本増強をあらゆる手段で進めていきたい」。「主要事業を切り売りして再生が果たせるか。社長にとっての再生とは?」との質問には、一瞬言葉に詰まる場面も。「第一に財務基盤の強化から始めたい」と繰り返した。 3月下旬に開く臨時株主総会での承認を経て、正式に分社化する。11月に発表したメモリーを生産するための四日市工場の新棟は、継続投資の観点から当初の計画通り2月に着工する予定だという。 (取材・文:具志堅浩二)