宇垣美里 「敬意をもって“ババア”と呼びたい。生きている人間なめんなよ」日本のホラーに物申す
敬意をもって“ババア”と呼びたい。生きている人間舐めんなよ
中古ではあるものの、念願の一戸建てマイホームへと引っ越した神木家。しかし、家族七人の幸せな日常は長くは続かず、次々と不幸な出来事が一家に降りかかる。 一人、また一人と家族の命が奪われていくなか、ついに認知症を患っていたはずの祖母が覚醒。生き残った長男と共に、家族を殺したこの家に住まう怪異への復讐を誓う。 前半の正統派Jホラーな容赦のない描写の恐怖と言ったら。仲の良い七人家族の食卓が和やかだからこそ、理不尽に奪われた平穏な日常のかけがえのなさを痛感し、生存者二人の燃え滾(たぎ)るような怒りに共感せざるを得ない。 後半の怒涛の展開こそがこの映画の真骨頂。ノールールに暴力を振るい無双する女傑たる祖母のことは、おばあちゃん、とかではなく敬意をもって“ババア”と呼びたい。生きている人間舐めんなよ、というような力強いメッセージを感じて鑑賞後なんだか勇気が湧いてきた。 最近の私、暑さにへばってちょっと弱っていたみたい。部屋を綺麗にしてたくさん食べて、命を濃くしてしっかり生きる。負けてたまるか。 『サユリ』 監督:白石晃士 原作:押切蓮介「サユリ 完全版」(幻冬舎コミックス刊) 脚本:安里麻里、白石晃士 出演:南出凌嘉、根岸季衣、近藤華、梶原 善、占部房子、きたろう、森田 想、猪股怜生ほか 配給:ショウゲート 製作プロダクション:東北新社 2024年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/108分/R15+ ©2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス <文/宇垣美里> 【宇垣美里】 ’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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