高身長女子ブームの〝元祖〟漫画「The♡かぼちゃワイン」とは?小柄な少年と「エル」の物語、女性にも支持
今年、SNSで「デカ女ブーム」と称される現象が話題になった。高身長女性に憧れる男性の投稿に端を発し、〝同好の士〟からの反響が相次いだことで「X」(旧ツイッター)のトレンドにもなったのだ。そうした女性像を漫画で表現した「元祖」ともいえる作品が1980年代にヒットした「The♡かぼちゃワイン」。作者・三浦みつる氏の生誕70年記念、キャリア初となる自選画集「LOVELY GIRLS MIURA MITSURU ILLUSTRATIONS」(立東舎)が8月に発売され、その中でも同作の長身ヒロイン「エル」の魅力がふんだんに盛り込まれている。三浦氏に作品の背景などを聞いた。 【写真】80年代にヒットした「The♡かぼちゃワイン」春助とエルのラブコメディ 「The♡かぼちゃワイン」は週刊少年マガジン(講談社)で81-84年に連載され、82年にはテレビ朝日系でアニメ化。小柄な主人公の少年・青葉春助と「エル」(Lサイズに由来)こと朝丘夏美のコンビが繰り広げるラブコメディだ。タイトルの由来は「編集部に早く提出しなければいけない時、たまたま台所に行ったら、かぼちゃとワインがあったから」(三浦氏)という。 エルの身長について、三浦氏は「最初の設定は175センチだったんですけど、途中から伸びて180センチにしました。中学生ですからね、ありえない(笑)」とニッコリ。エルのほぼ半分サイズに描かれた春助の身長について問うと、同氏は「最初の設定で春助は140センチだったんですけど、だんだん小さくなっていった(笑)。漫画の連載では『あるある』なんです」と、主役の男性キャラが読者に浸透していくに連れて小型化していく現象を指摘した。 エルは背が高いだけでなく、懐の深い豊満な体型が特徴的。春助との絡みは「母子」にも見える。三浦氏は画集内に「男はいくつになっても女性に対して母性を求める気持ちがあるのでは」というテーマを記した。76年から2年間、手塚治虫のアシスタントを務めた。「師匠というより神様。自分にとっては特別な存在です。手塚タッチは抜けきれない」。丸みを帯びた女性の描写などにその遺伝子が感じられる。 一方、同作は男性だけでなく、女性読者にも幅広く受け入れられたという。 「僕らが子どもの頃って『女の子は背が高いとお嫁に行けない』と言われた時代でした。連載当時でも、コンプレックスを抱えてつらい思いをしていた女の子もいたと思うんですけど、そういう子たちにもこの作品が響いたみたいです。〝高身長女子ブーム〟の火付け役になったと言われましたが、背の高い女性たちにも『大きくていいんだ。自分らしく生きれば』ということを伝えられたことはよかったと思います」 ちなみに、エルには当時の人気女性アイドルが複数イメージされている。 三浦氏は「宮崎美子さんのカメラのCMのビジュアルが元々のイメージです」と明かした。80年、斉藤哲夫のヒット曲「いまのキミはピカピカに光って」と共に、上着とジーンズを脱いでビキニ姿となり、はにかむ宮崎の姿が大反響を呼んだCMだ。さらに、同氏は「河合奈保子さんやアグネス・ラムさんとか、その頃、ボリューミーなアイドルが多かったので」と付け加えた。 さらに、実写映画化に向け、グラビアでも人気を博した女優・堀江しのぶさんをエル役として、所属プロダクションからオファーがあったが、実現しなかったという。その堀江さんは88年9月にスキルス性胃がんのため23歳の若さで死去。三浦氏は「高身長ではないが、グラマラスでイメージ的にもエルに合っていました」と幻の映画を振り返った。 今回の画集は、エルの魅力が満載の「The♡かぼちゃワイン セレクション」をはじめ、デビュー作からデジタル作品までの「自選イラストレーション」、初公開のラフスケッチから未発表作品を収めた「ヴィンテージ&スケッチ セレクション」の3パートに分かれる。72年、高校在学中に漫画家デビューしてから52年。「かぼちゃ~」後も「レンズマン」や、01年にTBS系でテレビドラマ化もされた「コンビにまりあ」などの作品を生み出したが、17年末で「ストーリー漫画執筆活動」を引退した。 11月に古希を迎える三浦氏は今回の画集を「漫画家としての集大成と履歴」と位置づけた。「今後は、手描きの楽しさと技術の伝承ができればいいなと思っています。絵本を『死ぬまでに3冊』という目標を掲げていて、今、アイデアを書き留めています」。絵本創作というネクストステージに動き出している。 (デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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