今激アツのスキーリゾート、まるで中世に迷い込んだようなジョージアの村ウシュグリ
ナショジオ厳選、今こそ訪れたい「世界の旅先2024」ベスト20より
欧州のジョージアにあるウシュグリ村へスキーに出かけても、おしゃれなホテルやラウンジはおろか、リフトさえもない。実はこうした快適性の欠如こそ、冒険好きのスキーヤーやスノーボーダーたちの間でウシュグリが人気を集めている理由だ(ウシュグリはナショナル ジオグラフィック誌の「今こそ訪れたい「世界の旅先2024」ベスト20」)にも選ばれている)。 【動画】パウダースノーでのスキーとウシュグリの中世のような村 世界のスキーヤーを魅了するのは、カフカス山脈の奥深くにたたずむパウダースノーに覆われた山々だ。こうした未整備の斜面は、一般的なスキーリゾートではまず体験できない。 しかし一番の魅力はスキーを滑っているとき以外で過ごす時間にある。険しい地形や過酷なまでの気候、そしてソビエト連邦時代にロシア化の動きに対抗してきたウシュグリの誇り高く、不屈の精神に満ちた文化に出会えるだろう。
ウシュグリの歴史とおもてなしの心
ウシュグリは、首都トビリシの北西約400キロのスバネティ地方にある、今も中世の趣を残す村だ。海抜約2100メートルと、欧州で最も標高の高い場所にある集落の1つで、住民の大半は牧羊業を営んでいる。 古い石造りの塔もスバネティの名物だ。なかには9世紀に造られた塔もある。こうした塔はかつて重要な防衛線を築いていた。紛争が起こると住民は塔に逃げ込み、高みから石を投げたり矢を射たりして侵略者を退けた。 ウシュグリは、ジョージア語で「恐れを知らぬ心」を意味する「ウシシャリ・グリ(ushishari guli)」という言葉に由来しているという。一帯の「上スバネティ」地方はユネスコの世界文化遺産に登録されている。 ジョージアでは勇敢さ、勇気、武器を扱う能力よりも、もてなしの心に価値が置かれている。この精神をよく伝えているのが、「すべての客人は神からの贈り物」ということわざだろう。訪れる人を温かく迎え入れ、心を尽くしてもてなすのは、ジョージアの人々にとってとても重要なことだ。 ウシュグリにある住宅の多くが現在はゲストハウスとして改修されている。ほとんどが家族経営で、宿泊客をジョージア風に手厚くもてなしてくれる。ホストの家族と食卓を共にすれば、昔ながらの生活様式を深く理解できるだろう。 「地元の伝統を体験することは、スキー旅行を、単に山を滑り降りること以上のものにしてくれます。独特の文化を味わえる没入型体験になるでしょう」と、山岳ガイドであり、スバネティでスキーツアーを催行するガイド協会を立ち上げたベカ・ファジシビリ氏は言う。