〈7年で約9倍〉「この子は目が見えない」「立てない子も」老“犬”ホーム需要急増の背景に飼育犬と飼い主の「ダブル高齢化」ホームの費用は?ペット信託とは?
人間でいう老人ホームのように、高齢になったペットを預かり世話をする介護施設「老犬ホーム」の需要が、いま高まりを見せている。この施設を通じて、年老いた犬を飼うことの難しさと課題を探りたい。 〈画像多数〉人間でいう老人ホームのように高齢になったペットを預かり世話をする介護施設「老犬ホーム」の需要が、いま高まりを見せている。この施設を通じて、年老いた犬を飼うことの難しさや課題を探りたい。
いまや、飼育犬の56%は高齢期に
環境省がまとめた資料によれば、2013年には20施設だった譲受飼養業者(動物を引き取って飼育する業者などのこと)の登録件数が、2020年には178施設に急増。現在は200施設を超えているといわれる。老犬ホームもその譲受飼養業者のひとつだ。 老犬ホームの需要がなぜ今、高まっているのか。背景にはペットの高齢化がある。 ペットの保険やネットサービスを手掛けるアニコムがまとめた「家庭どうぶつ白書2023」によると、犬の平均寿命は2009年度が13.1歳だったのに対して、2021年度は14.2歳と年々延びている。 また、一般社団法人ペットフード協会の「令和5年 全国犬猫飼育実態調査」によると、7歳以上の高齢期の犬は実に56%にも上っているというのだ。 東京都目黒区にある「THEケネルズ東京」。この施設では、ペットホテルの他に老犬ホームを手掛けている。ここで老犬ケアの責任者を務めているのが、板橋かおりさん(38)だ。 筆者がこの施設を訪れたのは5月下旬のこと。1階の入り口を入ると受付があり、地下1階と2階にはペットホテル、3階が老犬を預かるケアルームだ。 さっそく3階をのぞいてみると、ちょうど柴犬の小次郎くんの昼食タイムだった。小次郎くんを抱えながらケアスタッフがスプーンで食事を口の中に運んでいる。 小次郎くんはもうすぐ19歳。人間の年齢にたとえると現在88歳という高齢だ。自力で歩くことができず、移動の際は車椅子を使う。スタッフから「こじ」の愛称でかわいがられていた。食欲旺盛な小次郎くんだが、食事中、虚ろな目をしていたのが印象的だった。 「この子は目が見えていないんです」 そう言いながらスタッフが小次郎くんに昼食を与えていると、そこにゆっくりとした足取りで近づいてきたのは、ラブラドール・レトリーバーの銀時くん、14歳だ。ラブラドールの平均寿命は12歳前後と言われており、銀時くんは人間に換算すると100歳を超えている。 そんな銀時くんは糖尿病を患っており、インスリン注射による治療をうけている。そのため現在は食事制限中。ご馳走にありつけるのは1日に2回までと決まっているそうだ。 筆者やカメラマンにすり寄ってくる銀時くんは人なつっこい性格で、食事中の小次郎くんをうらやましそうに見つめる姿が愛らしい。 「銀ちゃんは、補助してあげると階段ものぼれるんですよ」(同) 足元がフラフラとおぼつかないものの、人間の100歳と思えば、まだまだ元気といえるだろう。