懐かしのおもちゃと30年ぶりに“再会”……『東京おもちゃショー』で感じた「令和のおもちゃ」が大人にとっても魅力的であるべき理由
筆者の家庭では6年前に長男、4年前に次男が生まれ、成長とともに彼らのおもちゃへの興味は増していくばかり。おもちゃ売り場に立ち寄ろうものなら、どう引き剥がすか、最悪なにかを買わなくてはならない事態になったとしても、最低限のコストで切り抜けようと方策を巡らせることもしばしば。そんなことを言いつつ、電車・新幹線好きの二人に影響され、プラレールの知識やレイアウトを作る技術はメキメキと上達していたり、知育玩具に興味を持って調べたり、おもちゃ売り場に行けば自分も夢中になって色んな商品を触ってみたりして「最近のおもちゃ、侮れん……」と感心する数年を過ごしています。 【写真】“謝罪動画”まで撮影できる、YouTuberになりきれる令和のおもちゃが進化しすぎて怖い そういうライフステージの変化と興味の移り変わりもあり、先日初めて『東京おもちゃショー』を取材してきました。 足を運んだのがビジネスデーということもあり、『コロコロ魂フェスティバル in 東京おもちゃショー2024』など一部のイベントやブースは出ていなかったのですが、それでも各企業のブースを隅々まで回ることでわかったことはいくつもありました。 まずは「自分たちも遊んでいたおもちゃがいまだに遊ばれていたり、このタイミングで復活・再ブームになっていたりすること」。たとえば筆者が子どものころによく遊んだ『ハイパーヨーヨー』(バンダイ)は、引くだけで投げずとも高速回転する新機構を搭載した『HYPER YOYO ACCEL』として復活。勝手に回ってくれるので、基本のトリックもやりやすそうですし、その自動回転を活かした新たなトリックも生まれているようでした。『ベイブレード』(タカラトミー)はまるで意思を持っているかのような急加速が可能になり、バトルの臨場感が増した『BEYBLADE X』に。いつも眠そうでかわいかった『ファービー』(ハズブロジャパン)は、カラフルで様々なジャンルの楽曲にあわせて踊るファンキーな姿になって戻ってきたのでした。 極め付けは『ピコ』です。セガ・エンタープライゼス(現・セガ)が1993年に発売した幼児向けの電子知育玩具『キッズコンピュータ・ピコ』を知っている方はどのくらいいるのでしょうか。今から思い返してみると、筆者の電子機器デビューは3歳のときに買い与えられた『ピコ』でした。これをテレビに繋いで絵を描いたり字を書いたりしてよく遊んだものです。そんなピコですが、2005年4月発売の『甲虫王者ムシキング あつめてあそぼう甲虫図鑑』を最後に新作ソフトの供給を終了。その後「アドバンスピコ・ビーナ」という後継機種が出たものの、こちらも2011年7月発売の『カーズ2 レーシングビーナ めざせ!ワールドチャンピオン!』以降新作ソフトは出ず、2013年にサポートも終了しました。 そこから約11年の時を経て、新知育デバイス『ePICO』(セガ)としてなんと復活。この日の『東京おもちゃショー』にて初お披露目となっていたのです。何も知らない筆者はブースに足を運んで「ピコだ!!!!!」とテンションMAXに。ウザいくらいの食いつきで担当者を質問攻めしたところ、新たな『ePICO』は子どもの「好き」を発見するためのデバイスとのこと。eマットなる足元のデバイスも付属しており、全身を動かして様々な体験をすることで、夢中になれる職業や趣味などを見つけることができるのだとか。そこから突き詰めるのは習いごとなどに任せるということらしいです。自分が30年前に夢中になったデバイスが、“知育”というコンセプトをブラさず、令和の価値観にアップデートされて出てきたことに「買わなきゃ!!!」と興奮して妻にメッセージを送ったのですが、想定以上にドライな反応。頑張って説得します。 一方、新しい時代を感じさせるおもちゃも数多くありました。たとえば『バズゅCam』(セガ)。これは三脚も一体になったVlogカメラのような出で立ちで、インフルエンサーのように動画を撮影・編集できるというもの。さらにテンプレ撮影機能を使えば「〇〇しょうかい」「〇〇してみた」などの形式で撮影可能なほか、「〇〇ふうーなりきり」には「しゃざいどうが」なる項目も。子どもがYouTuberの真似をして謝罪動画を撮る時代……と恐怖を覚えたのですが、安心してください。このカメラ、インターネットに繋がらない。つまり「うっかり投稿しちゃって炎上」なんてものもないわけです。あくまで”真似ごと”で終われるのも「おもちゃがおもちゃである所以」ですね。 このほかにもスマホ型のおもちゃがどんどん進化していたり、プラレール(タカラトミー)の新しいステーションには顔認証改札やAI音声案内の擬似体験ができる機能があったりと良いおもちゃはたくさんありましたが、そろそろ締めに掛からなければということで、まとめをひとつ。 当たり前のことかもしれませんが、子どもの手におもちゃが渡るとき、ほとんどの確率でそこには大人が介在します。大人たちからすれば、自分たちが体験したことのあるおもちゃであれば直感的にその良さがわかりますし、子どもに説明もしやすい。そういう意味で親世代になる自分たちにとって魅力的な平成おもちゃのリバイバルは必然ですし、これからもノーマークだったおもちゃが生まれ変わることもあるのでしょう。筆者にとってのピコのように、みなさんも自分の思い出のおもちゃを思い出しながら、いつかくるかもしれない再会の時を待ってみてはいかがでしょうか。
中村拓海