「国民を不幸にしているのでは」マイナ保険証のトラブル、7割の医療機関が経験 医師らの団体が調査結果を発表
費用的・精神的にも負担、閉院検討する医療機関も
さらに、保団連の副会長で歯科代表の宇佐美宏氏はマイナ保険証には構造上の問題があると指摘する。 「今回の調査結果ではマイナ保険証対応によってさまざまなトラブルが発生していると判明しました。 一番の問題は、デジタル弱者でもある高齢の医者や、経済的に弱く、設備投資が負担となる歯科の場合には、そこにたどり着くことすらできないことです。 現在調査中ですが閉院を検討している歯科もあり、今後歯科医療難民が増えるのではないかと危惧しています」(宇佐美副会長) 保団連の杉山正隆理事も、歯科医師としての立場から次のように述べる。 「マイナ保険証を読み込むためのカードリーダーなどを購入し、導入するだけでも相当な費用の負担が必要になります。 私は町の狭い医院を経営していますので、そうした機器を置くスペースを確保するだけでも大変です。 そんな中で、厚労省からは定期的に、脅すかのように『あなたの病院のマイナ利用率は何パーセントです』とまるで行政指導かのような連絡が来るので精神的にもプレッシャーを感じています」(杉山理事)
「資格確認証ではダメ」な理由とは
政府は今後、マイナ保険証を所持していない人に向けて、「資格確認書」を無償交付する予定で、資格確認書を提示すれば、引き続き、一定の窓口負担で医療を受けられると説明している。 これに対し、山崎理事は次のように訴えた。 「資格確認書は、マイナ保険証を利用している人には送られてきません。ですので、マイナ保険証を持っている人と持っていない人を分けて、そのうえで交付する必要があるため、膨大な予算と手間がかかります。 さらに、もともと健康保険証は法令で、被保険者全員への発行公布が義務づけられていました(編注:健康保険法施行規則第47条の2)。 政府は“当面の間”マイナ保険証を持っていない人に、資格確認書を送付するとしていますが、原則としては資格確認書の発行は義務付けられておらず、被保険者による保険者への申請が必要となります。 ですから“当面の間”の措置が終われば、目の見えない方や認知症の方など、資格確認書が必要な方に、届かなくなる恐れがあります。 保険を証明するものが、突然手に入らなくなるとなれば、それは国民皆保険制度を根本から破壊することにつながります。 こうした懸念があるので、資格確認書ではダメだと主張していますし、(システムの不備が改善されるまでは)現在の健康保険証が必要なのです」(山崎理事) 杉山理事も、「保険証は『証』ですので、証明に使えるものですが、資格確認書は書いてあるだけで、何かを公的に証明してるものではありません。健康保険証と資格確認書類には、そういう違いがあると思います」と付け加えた。