「来季は20勝も夢ではない」と専門家も太鼓判…千賀滉大「非ヒップファーストの理想的フォーム」解析
〈センガは素晴らしいシーズンを送った。ルーキーになる年を間違えたようだ〉 11月14日(日本時間)に発表されたナ・リーグの新人王投票で惜しくも2位となったメッツの千賀滉大(こうだい)(30)を、メジャーリーグの公式サイトはこう称賛した。 【画像】千賀滉大 非ヒップファーストの「理想的フォーム」連続写真で解説…! 確かに新人・千賀の活躍は、米国のファンを魅了するに十分だっただろう。12勝7敗、防御率2.98。とくに「ゴースト」と呼ばれた「お化けフォーク」の空振り率はメジャートップの59.5%を記録し、202もの三振を奪ったのだ。 動作解析の専門家で、筑波大学・体育専門学群准教授の川村卓(たかし)氏が語る。 「千賀の投球フォームには、ほとんど欠点がありません。柔軟性と力強さを兼ね備えた、理想的な投球スタイルです」 1年目から結果を出した千賀のピッチングを徹底分析した。以下、連続写真を見ながら川村氏の解説を聞きたい。 「始動の①では、両肩のラインと地面が平行で上半身が安定しています。右脚でしっかりマウンドを踏んでいるので、左脚を高く上げてもブレません」 ②の写真には、千賀の長所がよく表れているという。一般的に投手の身体は「ヒップファースト」で、お尻から打者方向へ動く。しかし千賀は独特な脚の動きで、頭から突っ込みがちな体勢でもうまくバランスをとっているのだ。 「左脚が『く』の字に曲がっています。この股関節を使った『内旋(ないせん)』という動きにより身体のバランスを保ち、脚をスムーズに前方へ出すことができるんです。『内旋』は田中将大や前田健太など、メジャーで活躍した多くの日本人投手に共通しています。また肩のラインが斜めになっているため、上から投げ下ろすオーバースローの動きがしっかりできています。上半身の使い方が上手くテイクバックも早いのでしょう。③では、右手がしっかり頭の上まで上がっています」 ③では、多くの長所が見られる。 「まずボールを持つ右手が頭のすぐ横にあること。捕手のミットを見る目に近いため、ボールをコントロールしやすくなります。また右ヒジが鋭角で、右手が高い位置にある。これにより右腕を大きくかつ鋭く振り下ろせるので、落差のあるフォークを投げることができるんです」 ④で注目すべきは右腕だ。 「ムチのようにしなっています。しなりが大きければ大きいほどボールに力が加わり、ストレートの威力が増します」 ⑤では、背番号が歪(ゆが)んで見える。 「肩甲骨を利用し、投球時の腕の動きにブレーキをかけている証拠でしょう。④までの力強い動きのままでは、右腕が吹っ飛ぶような感覚で負担が大きい。肩甲骨の動きで上半身にブレーキがかかり、故障のリスクを抑えているんです」 川村氏は、来季は今季以上の成績を残せると断言する。 「メジャーのマウンドにも慣れ、15勝はあげられるでしょう。20勝も夢ではない。最多勝を獲得できると思います」 千賀の「ゴーストフォーク」は、今後もメジャー強打者の脅威となりそうだ。 『FRIDAY』2023年12月8・15日号より
FRIDAYデジタル