自民党総裁選の共同記者会見に臨む9人の候補＝13日午後、党本部

自民党総裁選（27日投開票）は、過去最多9人の候補が党員・党友、国会議員の支持拡大にしのぎを削っている。「政治とカネ」の問題で批判を浴びる党は「金をかけない」総裁選をうたうが、天下獲りを目指す選挙活動にはそれ相応の資金が必要となるのも事実だ。総裁候補には、小泉進次郎元環境相（43）や、石破茂元幹事長（67）といった「世襲議員」がいる一方、高市早苗経済安保相（63）や、上川陽子外相（71）など一代でたたき上げた議員もいる。多彩な総裁候補の懐事情に迫った。 【画像】企業5921社が選ぶ自民の「次のトップ」 かつては「カネ」が勝敗左右も 9人の候補の資産や2022年の政治資金収入（前年からの繰越額を含む）は別表の通り。 目を引くのは小泉氏の「資産ゼロ」だ。一方で政治資金収入は2億7083万円で、9人中2番目の額だった。22年中に「小泉進次郎セミナー」「進進会」などの政治資金パーティーを12回開催した。 石破氏は資産が地元の鳥取県の土地や建物などを含む1555万円だった。政治資金収入は1億2143万円。22年に「石破茂セミナー2022」「石破茂君を囲む会」など年3回開いたと報告されている。 高市氏の資産は奈良県の土地などを含め1000万円で、政治資金収入は1億193万円だった。政治資金パーティーはゼロで、繰越額が6割を占め、個人からの寄付が中心だ。 資産と政治資金収入合わせて3億円を超えているのは茂木敏充幹事長（68）と河野太郎デジタル相（61）、林芳正官房長官（63）だ。これに対し、上川氏は資産、政治資金収入とも3000万円台だった。 こうした資金力の差は、支持者の獲得に影響が出てくるのか。公選法が適用されない総裁選では、かつては支持集めや敵対陣営の切り崩しのために札束が飛び交い、「ニッカ（2派からお金をもらう）」「サントリー（3派からお金をもらう）」「オールドパー（全派からお金をもらう）」などの隠語が飛びかっていたことで知られる。 政治評論家の有馬晴海氏は「以前は総裁選のたびに50億円くらいのカネが動いていたとされ、カネを持っている人間が勝つ構図だった。30年ほど前には総裁選の期間中、派閥のボスが毎晩料亭に子分を招集し、出席を取っていたこともある。2回ほど欠席が続くと『よそにいっているのではないか』と電話して締め付けを行っていたほどだ。だが、当時とは違い、今回の総裁選はほとんどカネがなくてもできる」と話す。