[山口県]荒れる海タンカー転覆、緊迫の捜索 下関、前夜から暴風警報
20日午前7時5分ごろ、下関市の六連島沖に停泊していた韓国船籍のケミカルタンカー「キョヨン・サン」(870トン)から「船が傾斜している」と118番があった。門司海上保安部によると、タンカーは転覆し、外国人乗組員9人を救助したが、うち8人の死亡が確認された。2人の行方が分かっておらず捜索している。 乗組員は計11人で、国籍はインドネシアが8人、韓国が2人、中国が1人。救助されたもう1人は命に別条はないという。タンカーは六連島沖にいかりを下ろして停泊中だった。 ◇ 韓国船籍のケミカルタンカーが転覆した海域に近い下関市の人工島「長州出島」に架かる橋のたもとには近くの垢田地区などからニュースで事故を知った人たちが集まり、捜索の様子を心配そうに見つめていた。海上保安部の巡視船が荒れた波間を移動したり、上空を航空機が飛び交ったりするなど緊迫した雰囲気に包まれた祝日となった。 普段から風が強い地域だが、この日は暗いうちからいつにも増して風が吹き荒れる天候だったといい、同市垢田町の会社員男性(52)は「玄関マットが吹き飛んでどこかに行ったほどだった。こんな中、海に投げ出されたなんて」と険しい表情。近くの主婦(72)は「昼のニュースで知って何度も見に来ている。近くでこんな事故が起きるとは。乗組員の方が心配だが、自分たちではどうすることもできない」ともどかしそうな表情を浮かべた。 転覆したタンカーのものとみられるオレンジ色の救命いかだが白波が立つ中を無人の状態で漂流している様子も確認された。 下関地方気象台によると、下関市では19日深夜から暴風警報、波浪注意報が発令されていた。20日午前5時10分に同市竹崎町で最大瞬間風速22・7メートル、同7時14分に最大風速12メートルを記録。同9時時点で現場周辺の波の高さは3メートル近くあったとみられる。昼前に暴風警報は注意報に変わったが、21日明け方にかけてうねりを伴った高波に注意を呼びかけた。