「捨てるものを再利用する。持続可能なコースにしたい」東松山CCが取り組むSDGsとは【環境と人にやさしいコース・東松山CC編】
「コンポストは大型トラック40~ 50台ぶんにもなります」
“戦車のような”大きな粉砕機で粉砕して作ったコンポストを従業員駐車場の脇に寝かせる。「量は500~600リューベくらいになる。600だと大型10トン車に40 ~ 50台ぶんくらいになります」
当然、作業の手間は増える。肥料をまいたほうが早くラクに結果を出せる。 「コンポストは最低5年くらい、いや10年は続けて結果を出すことが大切です。肥料費もですが、ラージパッチはすごく殺菌剤の費用がかかり、それも半分くらいに削減されつつあり、かなりのコスト削減になっています。もちろんコンポストの費用と手間を考えて現状は相殺という感じになってしまいますが、長いスパンで考える必要があります」 まさにSDGsにつながる取り組みだ。 「直接的には15番(SDGsの目標/陸の豊かさも守ろう)がゴルフ場には身近な取り組みでしょう。肥料の使用量に関しても、もちろん考えないといけませんが、SDGsの原点は、持続可能な開発ということ。ゴルフ場の場合はもうそこにあるものですから、ここから先のことを考えると、そこから排出される、捨てられるものをゴルフ場のなかで再利用できないかということも必要ですよね」
コース管理全体で考え方や感覚を共有
メンバーの理解もしっかり得ている。「すごく評価をいただいています。コンポストをまいた瞬間は、フェアウェイやラフが黒っぽくなるんですけど、このへんもメンバーの方全体の理解もいただき、本当にありがたいです」。 一般の企業や人々にも「SDGs」は浸透してきているのだろう。 一番の苦労は人材育成だと南氏。 「とても大事。共通の考え方や感覚を持ってほしい。今までのルーティンが1つでも変わるとすごく大変に感じるもの。コース管理全体に将来的なこと、5年、10年先のことも説明して理解してもらうのがいいと思っています」 ゴルフ場が環境破壊だと言われてきた時代がある。 「松枯れや楢枯れの問題もあり、これらの樹木は比較的管理されたところしか残っていかないような環境もある。ゴルフ場がキープしていると考えます」 「今、自然が破壊されていって、逆にゴルフ場にしか生息していない動植物なんかもあります。コースを守ることで環境を持続していく発想も大切です」と管理部の黒坂光男氏。“共通の考え”は浸透しているようだ。
35年間、ずっとこの仕事を“持続”してきた南氏が「管理の仕事のやりがいは“夏越し”です。毎年夏って違いますから」と言えば、黒坂氏も「この仕事の50%以上はそれを考えているかもしれません。前年の冬くらいから、です」と話す。管理課はパートを含めて22人。思いの共有と理解が、持続可能なコースをつくる。 美しく整備されたコースの前で。温暖化で“夏越し”には苦労が大きい。「昔は夏グリーン(高麗)と冬グリーン(ベント)のコースも多かった。今、そこに回帰しているのかもしれません」 PHOTO/ Yasuo Masuda
週刊ゴルフダイジェスト
【関連記事】
- ゴルファーを増やす、コースを存続させる…。「ゴルフへの恩返し」を少しだけ考えてみませんか?【参上! ゴルファー応援隊】
- 「当然、知っているでしょ!?」と、意外に教えてもらえない“バンカーならし”の基本【ゴルフプレーの作法2】
- 「当然、知っているでしょ!?」と、意外に教えてもらえないグリーン上のピッチマークの補修のやり方【ゴルフプレーの作法1】
- いよいよ開幕、全米オープン。河本力は大会直前にスコッティ・シェフラー、ジャスティ・トーマスとラウンド。「気さくな感じで『一緒にやろう』って言ってくれるなんて!」(河本)
- バックスウィングとダウンスウィング、体はどこから動かせばいい? 手から? 足から? 体の動かし方が良くなる基本ドリルも紹介