総合診療クリニック、普及のアイデア
◇費用サポートや医師の雇用
真面目に将来の医療を考えている自治体も増えてきています。小児科の医師不足を背景に、小児科を開業したら資金を援助する自治体もあります。 医療に不安がある地域では住民は安心できません。そこで、自治体に対して申し上げたいことがあります。総合診療クリニックが各市町村や人口2~3万のエリアに一つあれば、地域に密着した医療ができると思います。開業の費用面をサポートしたり、CTやMRIなどの高額な医療検査機器費用を援助したりするのもいいと思います。また、A市立総合診療クリニック、B町立総合診療クリニックなどを建設し、医師を雇用するのもいいでしょう。そこで大事なのは「まず診てくれる」ことです。
◇地域医療で患者を守る
今回の新型コロナウイルス感染症の大流行を経験し、日本中が大変困りました。ほとんどのクリニックが発熱患者を診なくなり、いわゆる診療難民が増え、地域医療を支えられなくなりました。本当のかかりつけ医は、どんな症状でもまず診察しなければいけません。医師でなければ、誰が診るのでしょうか。患者の健康を守るのが医師の仕事です。患者はまず近くのクリニックを受診します。そこから診察・治療が始まるのです。 そこで、医師になりたいと思っている学生や医学部生、研修医、これから開業しようと思っている方々に申し上げたい。一緒に地域医療を守りませんか。救急と一般的な疾患を勉強して、総合診療クリニックを開業しましょう。一人で担うのではなく、複数の医師が関わればいいのです。 近隣の総合病院と顔の見える関係で、患者をスムーズに紹介できるようにしましょう。患者を地域医療で守りましょう。私が開業して思うのは、本当のかかりつけ医は医師の最高のやりがいだということです。 最も患者に近い場所にいることが、医師としての役割です。総合診療クリニックを開業して実感しているのは、地域のニーズが高いということです。必ず地域になくてはならないクリニックとして、医師も成長します。クリニックの間口を広げることがとても大事です。 さまざまな立場の方が、いろいろな方面から地域医療を支えるために総合診療クリニックを普及させた方がいいと思い、私の意見を述べました。(了)
菊池大和(きくち・やまと) 日本慢性期医療協会総合診療認定医、日本医師会認定健康スポーツ医、認知症サポート医、身体障害者福祉法指定医(呼吸器)。2004年、福島県立医科大学医学部卒業。湘南東部総合病院外科科長・救急センター長、座間総合病院総合診療科などを経て、総合診療のかかりつけ医として地域を支えるため、2017年に「きくち総合診療クリニック」開院。著書に「『総合診療かかりつけ医』が患者を救う」(幻冬舎)。