アップルの新型iPadは“AI対応の遅れ”への回答か AIブームの中で「蚊帳の外」に扱われてきたが
送信に当たって利用者個人が特定されないような仕組みを構築することも不可能ではないだろうが、このAI処理(推論処理)の活用において、アップルはデバイス内で完結する(つまりオンデバイスの)使い方や機能にこだわってきた。こうしたこだわりが、“AI対応の遅れ”との指摘につながった面もあるかもしれない。 例えばAIアシスタントのSiriが組み込まれたHomePodとHomePod miniでは、ネットに個人情報を出さないという方針に沿って、音声アシスタント処理の大部分をデバイス上で処理している。
そもそもアップルは、デバイス価値を上げるためのAI技術に何年も前から取り組み、それらを実際の製品に反映してきた。ただ、これまではAIを活用した機能の説明において、”AI”というワードを大々的に使わず、”機械学習”というワードを用いていた。 昨年末、インテルが推論処理向けプロセッサに力を入れることを宣言し、「AI PC」というコンセプトを打ち出し始めたが、その意図するところはアップルが長年取り組んできたものと同じだ。単にマーケティング上の言葉の使い方が違うだけだ。
インテルはAIブームの中で「AI PC」を掲げたが、アップルはブームが来るはるか前から、AI技術の活用に取り組み、自社製デバイスの各種機能に搭載してきた。 今や推論処理専用回路であるNeural Engineは、Apple Watchの中にまで組み込まれている。 例えばiPhoneで文字の音声入力を行ってみると、その高い精度と認識速度の速さに驚くだろう。AI処理を活用しているからにほかならないが、この音声認識の技術は、画面が小さく、操作手法が限られているApple Watchでも生かされる。そうした環境、基盤を彼らは作り上げてきたわけだ。
■今後は他社製アプリの機能向上も 前述した2つのアプリケーションが実現している機能は、過去にまったく存在していなかったものではない。しかし推論処理の能力を高めることで、わずか5.1ミリの超薄型タブレットの上で、指先だけでそれらを利用できるのは驚異的だ。 現時点において、M4のNeural Engineをフル活用しているのはアップルが作った上記のアプリケーションに限られるが、同社は数年にわたって、ソフトウェア開発者たちとNeural Engineの活用を進めてきた。