<地域を守るため野を駆ける>ハンターたちは何を思うのか【前半】
高齢化も進み、その数を急激に減らしてきた日本のハンター。誰よりも野生動物と対峙してきた彼らの実態と思いを取材した。 【写真】「誰か一人、フィールドで活動できる人間が地域のために愚直に取り組むしかない」
Hunter1 長野県小諸市猟友会櫻井優祐さん田中直樹さん
「バーン、パーン」 張り詰めた雰囲気の中、耳をつんざく銃声が響き渡る。耳栓がなければ耐えられないほどの轟音だ。 11月4日、長野県佐久市にある佐久平国際射撃場を訪れた。取材で知り合った小諸市農林課に勤務する櫻井優祐さん(39歳)は「Hunting Team狩顚童子」と呼ばれる狩猟グループのサブリーダーだ。同グループの結成は2020年。メンバーは地元の20~40代の猟友会員が主体で、所属する会や地域の垣根を越えた10人。仕事も自治体職員や農業、金融業、会社員など様々で、女性も1人所属している。 この日は櫻井さんをはじめ、4人のハンターが真剣な表情でクレー射撃に打ち込んでいた。4人が持つ散弾銃は1発目、2発目と連続して発射できるタイプだ。丸い円盤の「クレー」が15メートル先から放出され、飛翔時間は5秒前後。1ラウンドで放出されるクレーは1人あたり25枚で異なる射台を時計回りに5周撃つ。 「クレーが粉々になったら芯を撃っている証拠です。当たった時の爽快感はたまりませんね。でも、最初は全然当たらなかったですよ」 笑顔でこう話すのは、チームのリーダーで狩猟免許を取得して15年目の田中直樹さん(41歳)である。 「11月15日の猟の解禁が待ち遠しいです。シカ、イノシシ、クマを狙う大物猟です。自分一人でクマを捕った経験はありません。狩猟中の緊張感は何年たっても変わりませんね」 ハンターの高齢化が進む中、櫻井さんは「僕たちのような若手・中堅主体のグループがあることを知ってもらい、狩猟を始めるきっかけや、どこで誰と狩猟をするのか選択肢の一つになれば嬉しい」と話す。狩猟で重要なことは何かと聞くと、櫻井さんはこう言った。 「山の中は、まさに道なき道です。けがや事故がないよう、猟場では、お互いが背中を預けられる存在でなければならないので、チーム内融和と信頼関係が最も大事ですね」 射撃中は真剣そのものだったが、終わった途端、温厚な表情になったことが印象に残った。