『ブギウギ』水上恒司は撮影裏でも愛助そのもの? 制作統括が絶賛する役への向き合い方
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。 【写真】水上恒司、インタビュー撮り下ろしカット(写真多数) 第11週では、いよいよスズ子の“恋の物語”が幕開け。お相手は、スズ子よりも9つ若い学生の村山愛助(水上恒司)。制作統括の福岡利武は「史実がそうだから、という考え方ではなく、年下の彼がスズ子に惚れ込む理由をしっかりと作って、彼の夢も大事に描こう、と。史実に寄せるのではなく『ブギウギ』らしい、スズ子らしい恋愛を描くことを意識しました」と語る。 今でこそ年下夫を描くドラマは多々あるが、朝ドラでは相当に稀有なこと。福岡は「スズ子は一度、演出家の松永さん(新納慎也)に恋っぽいものをしていましたが、それ以降も自分の恋愛よりも『しっかりステージで表現しなければいけない』という思いが強かった。そうして戦争で歌えなくなっていく中で愛助に出会いますが、歳下である愛助との物語を考えたとき、すごくしっくりきたんです」とその背景を明かす。 愛助を演じるのは、水上恒司。福岡は「『青天を衝け』でご一緒して、渋沢平九郎という役が決まってから、本当にいろんな本を読んで、お墓参りに行って、平九郎が歩いた道を歩いたというんです。『彼がどう思ったのか、少しでも空気を感じたくて』と。それを聞いたときに、ずいぶん泥臭い役作りで面白いなと思いました」と水上の印象を語り、「平九郎の死の場面では、撮影が押して夜中になってしまったにもかかわらず『彼の死を見届けよう』といろんなスタッフが残っていて。そう思わせる人柄も含めて、すごい役者さんだなと思いました」と感嘆する。 「純粋にスズ子のファンで、エンターテインメントが大好きで、まっすぐな男、という愛助を描きたくて、そこに水上さんの持つまっすぐさがうまくリンクすればいいなと考えました。不思議なことに、趣里さんと水上さんも9歳差なんですよ。そういった偶然も、面白いなと思っています」 クランクインの日には、役への思いが強いがゆえに、手汗をかくほどに緊張していたという水上。梅丸楽劇団時代からスズ子のファンだという設定に加え、「愛助として、ステージを見て感動することが大事」との思いから、趣里が歌う「ラッパと娘」の音源や、過去のステージ映像を鑑賞するなどして役に備え、実際に生でパフォーマンスを観た際には「めちゃくちゃよかった、最高です。世界一や!」と高揚していたという。 「趣里さんの表現力を心からリスペクトされていたところが、愛助らしさもあって良かったです。趣里さんにもその思いを伝えていましたし、水上さん自身が抱いたような感想がそのまま愛助のセリフにもあるので、非常に説得力が増したんじゃないかなと思います」 また第52話では、スズ子が汽車の中で「ふるさと」を歌うシーンも胸に響いた。福岡は「やっぱり歌の力ってすごいんだな、と伝わるシーンであり、愛助が間近でスズ子の魅力に触れる場面でもあります。実際に趣里さんに歌っていただきながら撮影をして、スタッフ含めてみんなで聴き入っていました。愛助もずっと『ええわぁ』と言っていましたし、一井さん(陰山泰)のトランペットも相まって、すごくいいシーンになりました」と手応えを語る。 一方で、「その前に描かれた“小夜ちゃん(富田望生)のお金はどこから出てくるんだ問題”がすごく難しかったんです」と本音も。最終的には演出と脚本の足立のアイデアで決まったというが、「すぐに出せなきゃいけないし、うっかり忘れていないといけない。悩んだ挙げ句、足袋の底に入れていたということになりましたが、『前日の夜、足袋を脱いで寝ているんじゃないか』『そのときに気づかなかったのか?』とか、いろいろと(笑)。うまく作るのに苦しんだ感はありますが、小夜ちゃんの芝居力で見事にコメディになったのではないかと思います」と、富田の巧みな演技に感謝した。 これまで苦しい展開が続いてきたスズ子に、ようやく見えた“愛助”という明るい光。前途多難ではあるが、2人の今後を温かく見守りたい。
nakamura omame