和傘(10月24日)
和傘を見かける機会は少なくなった。開けば、油紙のはがれる音とともにほのかに油の香りが漂う。雨を優しくはね返す音、竹と和紙と糸が織りなす風情は、さびの美学といったところか▼旧宿場町の街並みの一角に和傘が彩りを加える。須賀川市の晩秋の風物詩「風流和傘アート」だ。赤、紫、蛇の目など鮮やかな色彩が並び、夜には光で浮かび上がる。昨年は170本が広場を染め、巨大なクリスマスツリーのような配置がひときわ目を引いた▼新型コロナ禍で暗い世の中を、少しでも明るく照らしたい―。4年前、地元の商店主らが動き、雨の日のお供に着目した。最初は100本を並べただけだったが、蔵に眠っていた番傘を提供してくれる店もあり、回を重ねるごとに数が増えた。飾り方や光の当て方にも趣向を凝らした。口コミやSNSで知られるようになり、県内外から4千人が訪れるイベントに成長した▼今年は27日に風流のはじめ館前の庭で始まる。200本が用意され、初めて傘のトンネルに挑戦する。釈迦堂川花火大会、松明[たいまつ]あかし、イルミネーション、光の国のウルトラマン…。須賀川に、また一つ新しい光の物語が加わり、地域の未来を照らす。<2024・10・24>