登録抹消された「ガンダム」のその後 グレート合体を各陣営がトライアルしたワケは?
MSが巨大MAのコアになる「グレート合体」を開発した各陣営
「MSとMAの合体」というコンセプト自体は、一年戦争でも「Gアーマー」という例がありました。しかし、巨大MAという点を考えると、GP03が始祖の扱いといえるのではないでしょうか。 そのGP03が直接、影響を与えたかは不明ですが、皮肉にも地球連邦軍各陣営でMSをMA化する計画は存在しました。そのひとつが模型企画「ガンダム・センチネル」に登場した、アナハイムの開発による「MSA-0011[Bst]PLAN 303E S(スペリオル)ガンダム ディープ・ストライカー」です。もっとも机上プランのみで、試作されることもなく計画は終わりました。 ティターンズ側もコンセプトを練り込み、コアとなるMSにさまざまな強化パーツをドッキングさせて汎用化させるというプランを立てます。それが雑誌企画「ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに」などに登場する「RX-124 ガンダムTR-6[ウーンドウォート]」でした。 このTR-6は「MRX-009 サイコ・ガンダム」の両手両足を接続させた「ガンダムTR-6[ウーンドウォート]サイコ・ガンダムII ギガンティック・アーム・ユニット形態」ほか、その名もズバリ「デンドロビウムII」と呼ばれる可能性もあった「ガンダムTR-6[クインリィ]」という仕様もあります。 そして宇宙世紀0089年が舞台のマンガ『機動戦士ガンダム ヴァルプルギス』(脚本:海冬レイジ/著:葛木ヒヨン/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)に登場した「TRX-007 デルフィニウム」という機体は、デンドロビウムに酷似した外観を持ち、作中で「封印された機体をもとにした模造品」といわれていました。 さらに宇宙世紀0096年を舞台にしたアニメ『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』でも、「RX-78AN-01 ガンダムAN-01トリスタン」とドッキングする巨大アームドベース「RX-78KU-01 クレヴェナール」という機体が見られます。 その詳細な開発経緯は不明ですが、後にクロスボーン・バンガードの母体となる「ブッホ・ジャンク社」の私兵武装集団「バーナム」で運用されたという機動兵器であり、さらにトリスタンが、一年戦争中に破損した「RX-78NT-1 ガンダムNT-1アレックス」を改修したMSである、といった点からも、謎の多い機体でした。 このように、表向き登録抹消になったはずのアームドベースは、各陣営で秘かに開発が行われました。さすがにジオン側へのデータの漏洩はなかったのかもしれませんが、MSを巨大MAのコアにするというアイディアは別の形で生かされました。それがアニメ『機動戦士ガンダムUC』に登場した「NZ-999 ネオ・ジオング」と、アニメ『機動戦士ガンダムNT』に登場した「NZ-999 II(セカンド)ネオ・ジオング」です。 共に「MSN-06S シナンジュ」と「MSN-06S シナンジュ・スタイン」というMSをコアとしており、人型に近い形をしていました。その名前の通り、一年戦争最終盤に投入された「MSN-02 ジオング」の系列機で、さらに型式番号からもジオン系大型機動兵器の系譜だと考えられます。 これらの機体と所属組織を考えると、どの陣営もGP-03の系譜の機体を開発していたのかもしれません。なにせ、もともとの製造元があのアナハイムですから、情報漏洩もあえて見逃していた可能性すらあります。各陣営がこぞって開発するほど、ガンダム開発計画で生み出された技術は高いものだったのでしょう。
加々美利治