「予防目的で歯医者に行っている高齢者は介護費用が11万円低い」東北大大学院研究グループの調査で判明
東北大学大学院の研究グループによる最新の調査で、「予防目的」で歯科を受診している高齢者は、未受診者に比べて、その後8年間の累積介護費用が約11万円低いことが明らかになった。 【画像】自立した高齢者を対象に過去6か月以内の歯科受診の有無と、その後8年間の累積介護費用(グラフ/東北大学大学院歯学研究科)
口腔ケアが介護負担軽減に寄与することが再確認
これは、自立した高齢者8429名を対象に行われた大規模調査で判明したもので、予防歯科受診が介護の必要性を抑える可能性を示唆する重要な結果といえる。その後8年間の累積介護費用を比べると、「治療目的」の受診をしている人では約8万円、「予防または治療目的」の歯科受診をしている人では約10万円低いとの結果も出ており、口腔ケアが介護負担軽減に寄与する可能性があることが確認された。 研究を担当した東北大学大学院歯学研究科の竹内研時准教授は、歯科受診が高齢者の健康維持に果たす役割に注目しており、特に予防歯科は要介護状態になるリスクを低減させる可能性があるとしている。今回の研究は、超高齢社会において増加し続ける介護費用を抑えるための新たなアプローチを提示するものだ。
歯科予防の重要性
口腔機能は単に食事を楽しむためだけでなく、全身の健康維持に欠かせない要素だ。例えば、噛む力や飲み込む力が低下すると、栄養バランスが崩れ、免疫力や代謝も下がりやすくなる。これにより、感染症や生活習慣病、慢性疾患へのリスクが増し、日常生活にも支障をきたしかねないとされる。 そこで注目されるのが定期的な歯科受診による予防ケアだ。歯科健診では、歯周病やむし歯を早期に発見し、適切なケアを行うことで口腔内の健康を保つことができる。また、歯科医からの指導によって、口腔ケアの意識が高まり、継続的なセルフケアも可能になる。こうした取り組みが、将来的な介護費用の削減にもつながると考えられる。
今後の高齢社会における予防歯科の普及が鍵
日本の介護費用は年々増加しており、2019年には11.7兆円に達した。高齢者の自立生活と介護費用の削減を目指すには、国や地域が予防歯科の重要性を広め、支援策を強化することが求められる。今後、歯科受診が介護費用の増加抑制や高齢者の生活の質向上にどう影響するか、さらなる研究と実践が期待される。 構成・文/介護ポストセブン編集部