「ふっかーつ!」KANA-BOON 再始動ワンマン@渋谷WWW X【ライブレポート】
確かに谷口の言葉どおり、「最高」である。何がって、「おかえり」「ただいま」の空気を超えたパフォーマンスを、この日のKANA-BOONは見せつけてくれているからだ。演奏に込められたエネルギー、4人の音がガチっと組み合わさったときの爆発力は、この休止期間を経て間違いなくバージョンアップしている。サイヤ人みたいにさらに強くなって、KANA-BOONは帰ってきた。そのことがとにかくうれしいし、頼もしいのだ。 「ライブのない日々はマジで退屈でした」と谷口は言う。マーシーとふたりで旅行したり、山登りしたり、楽しいことはたくさんあったが、それでもどこか物足りなかった、と。「ライブがないと人生楽しくないってはっきりわかった」。その物足りなさをぶっ壊し、人生に絶対に必要なものを取り戻すために彼らはステージに帰ってきた。その強い意思が音を背骨のように貫いている。 KANA-BOONにとって、谷口にとっての音楽の存在意義を歌った「MUSiC」、そしてバンドの最初期から演奏され続けてきた「結晶星」と、ファンにとってもバンド自身にとっても大切な楽曲が立て続けに披露される。「結晶星」の〈それでいいんだよ〉という歌詞を歌った谷口が笑みを浮かべながら頷いてみせる。そんな仕草に、すべてを受け止めながらバンドを続けていく彼の思いの大きさが見えたような気がした。 そして「よし!」と気合を入れ直すと、鳴らされたのは「さくらのうた」。切ない情景が、谷口が経験してきた数々の別れとオーバーラップして胸を締め付ける。「スタンドバイミー」もそうだ。〈僕はやれる 君はやれる/飛び出せ世界〉。こうしてあらゆる曲がそのときのバンドのメッセージになるのは、谷口がそれだけそのときどきの自分に正直に曲を作ってきたからだろう。苦しいときにも、悲しいときにも、うれしいときや楽しいときにも、きっと彼は彼自身の曲たちに支えられ、救われてきたに違いないと思う。この日もKANA-BOONの曲たちは、オーディエンスを祝福し、バンドを励まし、谷口自身の背中をぐいぐいと押していた。 ライブの終盤、谷口は今回のメンバー脱退に至った心境を告白し始めた。4人で始めたKANA-BOONがずっと続いていくことを願っていたこと。でもその夢は残念ながら叶わなかったこと。いつの間にかオリジナルメンバーは谷口ただひとりになってしまったが、それでも「KANA-BOON」の名前を背負う意味は、KANA-BOONがすでに「自分だけのものではない」からだ。メンバー、ファン、スタッフ、たくさんの人の思いを背負って進んでいく覚悟。「俺の人生はボコボコの道だけど、舗装された道を歩いても面白くない。あんな人生でも大丈夫なんだって思ってもらえれば」という言葉に続いて、谷口は「俺が率いるKANA-BOONを見ていてください」と言った。 筆者の記憶が正しければ、彼はこれまで「俺が率いる」という言い方をしてはこなかったはずだ。そういう言い方は、きっと彼とKANA-BOONのバンド観にはなかった。でもこれからは違う。自分が背負っているものをちゃんと示すために、谷口はあえてそうした言い方をしたのかもしれないと思った。 〈何度も何度も何度も何度も/立ち上がり歩き出す〉と歌う「フカ」と、大変な時期にバンドを支え続けてきた「まっさら」で本編を終えると、アンコールではヨコイのギターソロも鮮やかに決まった「スターマーカー」、そして会場の全員でタオルを回した「ソングオブザデッド」を披露。そして「これからも長い旅、どうぞお付き合いください!」という谷口の言葉とともに演奏された最後の曲は「ネリネ」だった。軽やかなリズムと美しいメロディが、ここからまた始まっていく旅を彩る。 かくしてKANA-BOONという「スーパーフェニックス」は復活を遂げた。これからも人生いろいろあるだろうけど、それでもKANA-BOONは歩き続けていくだろう。新曲もめちゃくちゃ作っているとのことなので、まずはその新曲を聴ける日が来るのを楽しみにしている。 Text:小川智宏 Photo:マスダカイ <公演情報> KANA-BOON ONE-MAN LIVE "SUPER PHOENIX" 2024年5月17日(金) 渋谷WWW X 【セットリスト】 01. シルエット 02. 1.2. step to you 03. 彷徨う日々とファンファーレ 04. タイムアウト 05. FLYERS 06. フルドライブ 07. ないものねだり 08. MUSiC 09. 結晶星 10. さくらのうた 11. スタンドバイミー 12. フカ 13. まっさら EN1. スターマーカー EN2. ソングオブザデッド EN3. ネリネ <ライブ情報> ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 2024年8月3日(土)・4日(日)・10日(土)・11日(日・祝)・12日(月・休) 千葉市蘇我スポーツ公園 ※KANA-BOONは4日(日) に出演 風とロック芋煮会 2024 2024年9月7日(土)・8日(日) 郡山市 開成山公園 ※出演日は後日発表 ★秋からワンマンツアー開催決定! 2024年10月5日(土) 長野 CLUB JUNK BOX 2024年10月21日(月) 仙台 Rensa 2024年10月23日(水) 札幌 cube garden 2024年11月3日(日) 高松 DIME 2024年11月4日(月・振) 広島 LIVE VANQUISH 2024年11月14日(木) 名古屋 THE BOTTOM LINE 2024年11月21日(木) 福岡 BEAT STATION 2024年11月25日(月) 大阪 GORILLA HALL 2024年11月28日(木) 川崎 CLUB CITTA' ※ツアータイトルやチケット先行スケジュールなどの詳細は後日発表